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「ご飯も食べず…すごい落ち込み方でした」セッター関田誠大の心を解きほぐした“同い年”山内晶大の誘い「西田と一緒に大浴場で」
posted2023/10/04 17:22
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Yuki Seunaga
重苦しい敗戦から2日。チュニジアにセットカウント3-0で勝利し、日本の絶対的司令塔・関田誠大(ジェイテクトSTINGS)に不敵な笑みが戻ってきた。
現在開催中の男子バレーボール・パリ五輪予選は苦しいスタートとなった。初戦のフィンランド戦、第2戦のエジプト戦は、1、2セット目を大差で奪ったが、3セット目から開き直って強力なサーブなどで攻めに転じた相手に流れを奪われフルセットに持ち込まれた。フィンランドには競り勝ったが、エジプト戦は第5セットを落とし、痛すぎる敗戦を喫した。
そのエジプト戦は、第4セット中盤に連続失点し7-12と引き離されたところで、関田に代わって今年代表初招集の山本龍(ディナモ・ブカレスト)がコートに入った。フィリップ・ブラン監督は交代の理由を「サイドアウトが機能していなかった。トスが低くなり始め、スパイカーが高いところで打ち分けられなくなっていた」と語った。
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今シーズン、プレーの不調が原因で関田が交代したのは初めてのことだ。試合後、目を赤くしてミックスゾーンに現れた関田は、記者陣の呼びかけに対し、「ちょっと……(今日は)いいですか」と懸命に涙をこらえながら立ち去った。
ショックの大きさ、自身への失望感がうかがえた。
2度目の五輪予選「あの頃は自分のことで精一杯」
関田にとっては2度目の五輪予選だ。1度目は2016年のリオデジャネイロ五輪世界最終予選。それが関田の代表デビューの場だった。今回のパリ五輪予選前、当時を振り返りこう話していた。
「相手の気迫というか圧が、ものすごかったという記憶があります。めちゃくちゃ緊張して、アップアップでした。僕はリリーフサーバーで出ることが多かったんですけど、『ヤバイヤバイ』と思いながら(苦笑)。当時、『この舞台で普通にプレーできたらすごいだろうな』と考えながらやっていました。
あの頃は本当に自分のことで精一杯だった。控えだったので、ちょっと今とは立場が違いますし、あの頃を思うと、今、少しは成長したのかなと思います。次はチームにもっと貢献できるところがたくさんあるので、そこを今大会で出せたらなと思います」
思わず「少しじゃないでしょう」と言ってしまった。関田は今の日本代表の核だ。今年のネーションズリーグでの銅メダル獲得も、関田抜きではなし得なかった。
確かにエースの石川祐希(パワーバレー・ミラノ)や西田有志(パナソニックパンサーズ)、高橋藍(日本体育大学)など攻撃陣には実力者が揃っているが、彼らの力を最大限に引き出せるセッターがいるからこそ、高さで上回る強豪を次々に破って日本は世界ランキング5位にまで上昇した。