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試合中もずっとストレッチ…男子バレー“静かな仕事人”宮浦健人(24歳)の原点とは?「俺について来い」ぶっ倒れるまでコートに立った伝説
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/05 17:01
試合中、ゴムチューブを使ってストレッチをする宮浦健人(24歳)。いつコートに立ってもいいように、準備を欠かさない
4年生の最後の大会、全日本選手権で優勝したときの様子だ。宮浦が4年生だった2020年は新型コロナ感染症拡大の影響で春季リーグ、東日本インカレ、秋季リーグが軒並み中止となった。最初で最後の大会となった全日本インカレで早稲田大は見事、優勝を飾ったのだが、主将だった宮浦は全身全霊をかけて試合に臨み、試合後、自分の力では立っていられなくなった。
起き上がることができず、トレーナーが使う治療用の簡易ベッドに横たわったまま最後のミーティングに参加したという。
「やりきって、力尽きて、座っていることもできないぐらいの状態だったのでベッドに寝かせたんですよね。元々、それほど口数は多くない選手なんですが、とにかく黙々と練習をして、プレーして、チームメートに対して言葉でいろいろと言うのではなく、『俺について来い』と姿勢で見せるタイプの主将でしたから……。全力でプレーした結果、倒れてしまったんでしょう」(松井監督)
宮浦の責任感の強さが垣間見えるエピソードである。
「いつでもチームに貢献できるように」
パリ五輪出場権をかけた試合は残り3戦。すべて勝たなければ今大会での切符獲得は極めて難しくなる。
「人間ですから、西田選手も毎試合、ずっといいパフォーマンスを出せるとは限らない。代わりに出場するときには、いつでもチームに貢献できるようにと常に思っています。最後3戦、これまでと変わりなく、しっかり準備をして、自分たちらしい試合をします」(宮浦)
おそらく総力戦になるであろうセルビア戦以降の戦いに向け、宮浦は静かに、自分の役割を全うすべく準備を整えている。