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佐々木歩夢「旗から力を頂きました」加藤大治郎の日章旗が22年ぶりにサーキットを走った舞台裏と、小椋藍が掲げられなかった残念な理由
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/10/05 11:04
加藤大治郎の日章旗とともにコースを回り、パルクフェルメに戻った佐々木歩夢。旗の黄ばみが22年の歳月を感じさせる
2000年10月4日生まれの歩夢は、小学生の頃は「74Daijiro」を使ったポケバイのシリーズ戦で圧倒的な速さでチャンピオンになり、その名がレース界に知れ渡った。その後、ホンダ育成ライダーとしてアジアタレントカップ、ルーキーズカップに参戦して両タイトルを獲得。17年にホンダ育成ライダーとしてフル参戦を開始、この年にルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得するなど、ライダーとしてはまさに順風満帆だった。
しかし、18年19年とホンダチームでは思うような結果を残せず、20年にフランスのレッドブル・KTM・テック3に移籍してから本来の力を発揮し始めた。22年にはKTM傘下のハスクバーナに移籍し、2勝9回の表彰台獲得で総合4位。今年もここまで8回の表彰台に立ってチャンピオン争いに加わっている。
際立つメンタルの強さ
歩夢の強みはライダーとしてのスキルの高さはもちろんのこと、メンタル面にある。今大会もホームGPという歩夢にとって特別な舞台にもかかわらず「緊張はない」と言い切り、チャンピオン争いの中で力を出し切った。メンタルの強さでは、まさに大ちゃんを彷彿させるものがある。ここからの6戦はアジアラウンドが多く、歩夢にとってはライバルを突き放すチャンス。ますます熾烈さを増すタイトル争いの中で、歩夢の強さが際立つことになるのではないかと思っている。
子どものころから「GPライダー」になるための英才教育を受けてきた歩夢。中学生のころにインターナショナルスクールに通ったことで、英語が堪能なことも好成績を支える要因のひとつ。コロナ禍になってから交際を始めた英国人のグエンダリン・メルセデス・グリフィスさんと彼女の家族の強力なサポートも好成績を支えてきた。
ポケバイ「74Daijiro」から育ったライダーとして、初の世界チャンピオン獲得の期待が膨らむ歩夢の、これからの6戦に注目したい。