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佐々木歩夢「旗から力を頂きました」加藤大治郎の日章旗が22年ぶりにサーキットを走った舞台裏と、小椋藍が掲げられなかった残念な理由
posted2023/10/05 11:04
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
10月1日にモビリティリゾートもてぎで開催された第14戦日本GPで、かつて日本を代表する名選手でMotoGPレジェンドライダーでもある大ちゃんこと故・加藤大治郎が、Moto3クラスで2位表彰台に立った佐々木歩夢とともにサーキットを走った。
22年前、大ちゃんは250ccクラス(現在のMoto2クラス)でシーズン最多優勝記録の11勝を挙げて世界チャンピオンに輝いた。その年、鈴鹿サーキットで開催された日本GPで勝利した大ちゃんがウイニングランで使った日章旗が、歩夢とサーキットを一周したのだ。
今年のもてぎでは場内実況とテレビ放送で「いま、佐々木選手が持っている日章旗は加藤大治郎選手が使ったものです」と伝えられたが、この言葉を聞き、2001年の大ちゃんの勇姿を思い浮かべたファンも多いのではないだろうか。
倉庫の片隅で見つかった日章旗
この日章旗は、日本GPの1カ月ほど前に「74Daijiro」を制作する工場の倉庫で見つかった。「74Daijiro」とは、大ちゃんが03年に事故で亡くなった後、日本の子どもたちの入門用バイクとして大ちゃんの両親が制作を始めたポケバイで、その制作に長年携わる村上裕二さんから、日本GPを前に「22年前の日章旗を見つけた」という連絡が入った。
「それじゃ、日本GPで74Daijiroで育ったライダーたちに、この日章旗を持って走ってもらったらいいのでは?」と僕が提案すると、村上氏は二つ返事で了承。まずは、最初の決勝レースとなるMoto3クラスで、「74Daijiro」のシリーズ戦チャンピオンになっている歩夢に渡そうということになった。優勝すれば、これ以上うれしいシチュエーションはないが、優勝できなくても表彰台に立てなくても、チャンピオン争いをする歩夢にこの旗を持って走ってもらおうということが、このときに決まった。