酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平の試合でおなじみ「ピッチクロックで“25分短縮”」に米国はポジティブ…WBC連覇へ「平均3時間11分」NPBも導入必須では?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byEzra Shaw/Getty Images
posted2023/10/09 11:00
大谷翔平の試合を見ているとよく目にしたピッチクロック。日本プロ野球でもやはり導入の必要性がある?
それよりも目立つのは「ピッチクロックが導入されれば、今回のWBC決勝戦の、大谷翔平対マイク・トラウトの最終打席での、捕手・中村悠平と大谷がサイン交換をした『究極の30秒間』はなかったはずだ」という声だ。
投手の投球間隔の「時短」は、野球の魅力の一つである「間合い」を消してしまう。
確かに重要な指摘ではあるが、今季「ピッチクロック」を導入したMLBの野球が「つまらなくなった」よりも「スピーディな展開で面白かった」との声が多い印象である。
WBCはMLB側の主催だからピッチクロックは…
151年前にアメリカから伝わって以来、日本野球は、アメリカでルール改定があるたびに2~3年遅れでそれに従って「野球規則」を書き改めてきた。
ただ、近年のアメリカ側の矢継ぎ早のルール改定に関して、日本側の対応は内容によってまちまちになっている。最近では「申告敬遠」が2017年にMLBで導入されると、翌年からNPBや大学、社会人もこれに追随し、2020年には高校野球でも導入された。
タイブレーク制は国際大会では2008年から導入された。アマチュア球界ではかなり普及が進んでいた。MLBは2020年から導入されたが、NPBでは未導入だ。ただ、WBCでは2013年の第3回大会から導入している。
しかし、まだ「ワンポイントリリーフの禁止」は、日本球界では導入されていない。今季から一~三塁のベースは1辺3インチ大型化されたが、これも追随する予定はない。
ただ、このままいけば2026年に開催される「第6回WBC」はMLBとMLB選手会の主催だから、「ピッチクロック」が導入される可能性は高いだろう(MLBが関与しない来年の「プレミア12」は導入しない可能性もある)。もし、NPBが「ピッチクロック」を導入しないままで3年後を迎えれば、投手陣がその対応に苦慮する恐れがある。
球場に「タイマー設置」などしなければならないが
「ピッチクロック」の導入には、各球場に「タイマー」を設置しなければならない。MLBの場合、本拠地球場以外での公式戦はほとんどないが、地方球場での公式戦が一定数あるNPBでは、その都度「タイマー」設置が必要となるし、スタッフも配備しなければならない。その経費は小さくはないだろう。
また3時間10分の試合時間が2時間40分と短縮されれば、ビールなど場内での飲食物の売り上げが減る懸念もある。ただ筆者は今夏、ビールの売り子の取材をしたが、ビールの売り上げは試合開始から前半戦と、勝負が決まる終盤に伸びる。中だるみの時間が短縮されても、それほど売り上げに響かないようにも思えるが――。