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大谷翔平“魂の投球”→驚きの展開に!「こんな現場は初めて」記者が忘れられない名シーン…ドジャース名将からのラブコール「今夜の私はファン」
posted2023/10/05 11:05
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
投手・大谷翔平は今季10勝5敗、防御率3.14の成績を残した。2年連続での二桁勝利は自身初、二刀流としてはベーブルースが1915年から18年にかけて記録した4年連続に次ぐものとなった。
今季は初めて中5日での登板を基本とし、規定投球回数(162回)をクリアした昨季の166回を上回ることを目指し、『エースの証』とされる200投球回数も視野に入れた。しかし、8月23日のレッズ戦で右肘は悲鳴をあげてしまった。
結果、23先発で投球回数は132。平均投球回数は5回2/3強、奪三振率は11.4。昨季の6回弱、11.9から微少とはなったものの大きな差はなく高い次元で安定した。その中で被打率.184は規定投球回未満ではあるが昨季の.203を上回り、ヤンキースのゲリット・コールがマークしたア・リーグトップの.206をも上回った。投手としての成長が表れた数字と言っていいだろう。
ベスト登板は“誰もが見たあの試合”
『今季ベスト登板』の問いかけに対し、大半の方は7月27日の敵地でのタイガース戦を挙げるだろう。大谷にとって、メジャー初完投、初完封。その選定に異論を挟むつもりはないが、個人的にはこの時、既に大谷の投げるボールは本来のキレを失っていたと感じている。決して万全な状態でない中でタイガースを1安打、3四球、8三振としたのは、投手・大谷の『成熟度』を表している。その点では今季ベストだと感じる。
今季ベスト登板はレギュラーシーズンではなかったが、WBC決勝の米国戦だと思っている。特に盟友マイク・トラウトをフルカウントから空振り三振に仕留め、優勝を決めた87.2マイル(約140.3キロ)のスイーパーは切れ、動き、軌道のいずれをとっても今年の『ベストピッチ』だった。
余談とはなるが、この時、大谷は15球を投じた。内訳は直球10、スイーパー5。リードはわずか1点の最終回、しかも、米国オールスター軍団相手の登板では1球の間違いも許されない。その状況でこのふたつの球種だけで勝負を挑んだことは、大谷自身が最も信頼し自信を持つ球種は、直球とスイーパーであることを意味している。「直球とスプリット」から「直球とスイーパー」へ。彼の意識が表れた登板だった。