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「主人公が細身なのは千代の富士の影響も…」未完の“伝説的相撲漫画”『バチバチ』はいかにして生まれたか《Netflix『サンクチュアリ』で話題》
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byNumber/佐藤タカヒロ
posted2023/09/30 17:00
連載終了から5年が経った今も根強いファンが多い相撲漫画『バチバチ』シリーズ。主人公のモデルとなったのは…?
連載がはじまるにあたって、相撲部屋や国技館へ取材も沢山行った。
「自分で描くことになり、色々調べると奥が深くて本当に面白い」
意欲的な取材姿勢が印象的だったという。もともと佐藤さん本人は柔道経験者で、高校時代は東北大会まで進出するほどの選手だった。そんな背景もあり、「1対1の格闘技」という面で柔道と共通した部分も多い相撲への思い入れは強かったという。
主人公・鯉太郎には”あの力士”の影響も…?
「余談ですが、佐藤君は昔から千代の富士の大ファンだったんです。主人公の鯉太郎が細身で筋肉質なタイプの力士なのは、その影響なんです」
知れば知るほど相撲への熱が高まっていき、その熱量は何より作品に活かされることになった。
「とにかく“相撲”や“力士”に対するリスペクトはすごく持っていたと思います。連載当時は朝青龍、白鵬、日馬富士などのモンゴル人力士が次々に横綱になっていたころで、相撲ファンの一部からは日本人横綱がなかなか出ないことへの批判も出ていた。
でも、例えば白鵬だって最初は体重60kgとかで、決して恵まれた体躯じゃない中で単身、異国の地に来て戦っていたわけです。そのすごさはやっぱり尊敬すべきことだと。作品にもライバルのひとりにモンゴル人力士が出てきますけど、そういう努力や頑張りは社会状況に流されるんじゃなく、正攻法でしっかり描こうという話はしていました」
そしてそんな佐藤さんの想いは、多くの漫画ファンはもちろん、実際に相撲に携わる関係者たちにも強く伝播していった。
「相撲界の慣習や文化もちゃんと取材してリアルに描いただけに、業界内人気はすごかったですね。実際に現役力士の方が読んでくれているという話もよく聞きましたし、現役の行司の方からファンレターが来たこともありました(笑)。相撲だけでなく他の競技も含めて、多くのアスリートの方が読んでくれていたようでした」