- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
「主人公が細身なのは千代の富士の影響も…」未完の“伝説的相撲漫画”『バチバチ』はいかにして生まれたか《Netflix『サンクチュアリ』で話題》
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byNumber/佐藤タカヒロ
posted2023/09/30 17:00
連載終了から5年が経った今も根強いファンが多い相撲漫画『バチバチ』シリーズ。主人公のモデルとなったのは…?
「正直、当時は相撲がテーマの人気漫画ってほとんど存在しませんでした。しかも佐藤君はその前の作品で、同じ格闘技の分野の柔道をテーマに描いて打ち切りになっていた。似た内容でやってもなかなかうまくいかないんじゃ……とも思ったんですけど」
一方で、送られてきたネームを読んでみると、登場するキャラクターの造詣には魅力を感じたという。
「色々直すところはあったんですけど、主人公の鯉太郎の父親・火竜というキャラクターが最初からいて。それがすごく魅力的だったんです。そこに端を発する“家族の物語”というテーマが作品の根底にしっかりあるのも良かった。
だから、まずはその火竜に負けない魅力のある主人公を作ろうという話をしました。敵役だった虎城親方は、なんとなくナベツネ(※読売新聞社の渡辺恒雄主筆)さんみたいな“業界のドン”をイメージして描こうみたいな話とかもしましたね(笑)」
そんなやりとりを経つつ、6~7回のリテイクを繰り返したという。するとその都度、佐藤さんはものすごい速さで直しを送ってきた。
「後になって『途中からはこれでダメだったら漫画家辞めようと思っていた。そのくらい毎回、直すごとに良くなっていくのが分かった』と言われて。それだけ本人も熱が籠っていたんだと思います」
「相撲」をテーマにするには一抹の不安もあった
そして編集長に初回のネームを提出すると翌日、突然高田さんの内線が鳴った。編集長に急に別部屋に呼び出されたのだという。
「怒られるのかと思いましたよ。『柔道でダメだったから相撲って安直過ぎんだろ、ナメてんのか』って(笑)」
ところが編集長からは意外な言葉が飛び出したという。
「『こんなすごいの見せられたら、やらないわけにいかないだろ』って言われて。そこからはもうトントン拍子で連載がはじまりました」