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高校野球で“勝ち過ぎた”監督、香田誉士史が明かす…慶応の優勝に何を思ったか? 17年前、駒大苫小牧で体感した「内臓にくる」応援の魔力
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/28 11:03
かつて駒大苫小牧を率いて、夏の甲子園を席巻した香田誉士史
香田 この夏も各都道府県の教祖様みたいな監督がいる学校が勝ち上がってきたでしょ? 高校生って純粋だから、監督の色になるじゃない。社会人や大学生と比べると、まだ、真っ白なキャンバスみたいなもんだから。花巻東は佐々木(洋)カラーだし、聖光学院は斎藤(智也)カラーになる。
――花巻東はこの夏、3回戦の智弁学園戦でオーバーハンドの左投手を前日、サイドスローにさせて、それで勝ったんですよね。あれは驚きましたね。あんなこと、できるんですね。
香田 だから、監督が「お前は虎だ」って言ったら虎になるチームなんだから。「おまえはサイドだ」って言ったらサイドになるんだよ。
慶応の優勝は、複雑な思いになった監督も多いんじゃないかな
――自主性を尊重していた慶応は無色と言えるのかもしれませんけど、それも監督が無色というカラーに染めていると言えばそうですもんね。
香田 ただね、慶応の優勝は、複雑な思いになった監督も多いんじゃないかな。自主性、エンジョイベースボールって言って勝たれたら、おれは今まで何をやってきたんだろう、って。おれですら、そういう感じあったもん。今は高校野球、関係ないのに。監督時代、「自主性」なんて言葉使ったことなかったから。楽しめとは言ったことあるけど。
――でも、そのあたりもだいぶ誤解されていますよね。慶応の選手に「このレベルの野球で楽しむって難しいと思うけど、どうやったら楽しめるの?」と聞いたら「練習で自分を追い込むことです」と言っていましたし、森林(貴彦)監督も「エンジョイベースボールは、レベルの高い野球をすること」だと話していましたから。なので、今までの優勝校と大きく違うところもあるんでしょうけど、やはり同じところもたくさんあって、ただ、その表現方法が違うだけなのだと思います。
香田 そういう説明もして欲しいよな。でないと、中には、全部否定されたような気分になっちゃってる監督もいるから。そこはやっぱり社会人でも高校でも、勝つためには、ここは同じだなというのは絶対にあると思うんだよね。
〈つづく/「香田誉士史に直撃『高校球界に電撃復帰はある?』」編〉