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ドイツ撃破後、遠藤航が語った「個で勝りながらチームとして戦う」…日本代表「個か組織か」の時代はもう終わった 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2023/09/17 17:28

ドイツ撃破後、遠藤航が語った「個で勝りながらチームとして戦う」…日本代表「個か組織か」の時代はもう終わった<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ戦後、遠藤航が語った日本の「距離感の良さ」の要因、日本代表の未来図。その言葉を紐解く――。

 ドイツ戦では前半37分すぎに、CB冨安健洋に対して鋭い形相でコーチングをしていたのが印象的だった。相手のサイドチェンジに対してスライドが少し遅れ、右サイドではっていたレロイ・サネにあわやというシーンを作られた直後のことだ。サネヘのケアが危うかったのとスライドスピードとコースがずれていたことを指摘。冨安とそのまま言葉を少し交わし合うと、うなずき合ってすぐまた次のプレーへと移っていった。試合中の短い時間に要点をまとめてイメージを共有するのは簡単なことではないが、そうした作業がスムーズにいっていることからも、今の日本代表がいい状態なのがうかがえる。

未来の日本代表への意識

 ポジティブなことが多いのは喜ばしいことだが、でも、ここがゴールなわけではない。自分たちが具体的に思い描いている夢があるから、途上で満足したり、手綱を緩めるつもりは全くない。ドイツ戦後のミックスゾーンで遠藤は、「僕らは本気でワールドカップ優勝を目指している」という言葉を何度か口にしていた。とても自然に、時に笑顔を交えながら。言葉の響きには尖ったところも、あいまいな感じもなく、まっすぐなメッセージがそこにはあった。

「僕も含めて大人たちは《夢のまた夢》みたいに思ったりはしてるけど、でも僕たちはそこを目標設定としているし、それを現実にできるって本気で思ってる。
 今の子供たちには、『今日本代表ってワールドカップ優勝目指してやってるんだよね』っていう純粋な気持ちをぜひ持ってほしい。(そんな子供たちが)大人になったときに日本代表に入ってきたら、そういう思いって多分、本当に心の底から思ったりできると思うんですよね。自分がキャプテンになったときに『ワールドカップで優勝する』って発信したというのは、そういう意図もあったりする。こうして今日結果が出たっていうことに対しては、子供たちにとっては夢を与えられてるんじゃないかなと思います」

《個で勝れないからチームとして戦う》ではなく…

 それこそ日本は世界から相当なレベルで警戒されるだけのサッカーを展開している。日本相手に不用意な攻撃を仕掛けず、逆に完全に守備を固めて日本のミスを誘発し、カウンターやセットプレーで狡猾に試合を運ぼうとする国も出てくることだろう。そうなるとプラスαの部分をどこまで持つことができるかが重要になってくるはず。遠藤はさらに次のステージに行くためのヒントを口にしていた。

「チームのためにやるというところはやっぱり日本人の一番いいところだと思う。でもそれが意味するのは、《個で(まさ)れないからチームとして戦う》ではなくて、《個で勝りながらもチームとして戦う》。それぞれの選手が所属クラブで何をしなきゃいけないかっていうことはわかってるとは思う。個の能力が上がれば当たり前だけどチーム力は上がる。そうすれば日本代表チームというのはさらに強くなっていくと思う。いろいろなビッグクラブでやるような選手たちが増えていけば、より強いチームになっていくんじゃないかと思います」

 個か組織かという時代ではもはやない。遠藤は新時代の日本代表の旗頭として戦っていく。

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