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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
“らしくないドイツ”にサポーターが怒りの指笛…「公平に見ても日本代表の方が魅力的」カメラマンが敵地で目にした“ドイツ国民の心が折れた瞬間”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/09/15 17:01
ドイツとトルコから4ゴールを奪って欧州遠征を2連勝で終えた森保ジャパン。試合を撮影したカメラマンが、現地の様子を詳細にレポートする
もっとも、ギリシャはオランダに0-3で敗れても、サポーターからの支持は厚かった。最終ラインのパス回しでミスが出てもスタンドから不満が漏れることはなく、むしろ次のチャレンジを後押しするための声援が起こった。
2004年のEUROを忍耐と規律によるハードワークで制して世界を驚かせたこともあるギリシャだが、それはあくまでも強豪揃いの欧州でいかに勝つかという“弱者の戦い方”の徹底だった(それで実際に勝てるのだから見事だが)。ギリシャの場合は、弱者のサッカーからの脱却を図るチームが、失敗したとはいえオランダ相手に新たなスタイルを貫く姿勢を見せたことで、一定の支持を得られる素地はあったわけだ。
前半終了の笛と同時に起きた大ブーイング
しかし当然ながら、ドイツはギリシャではない。
彼らはもともと強者側であり、ナショナルチームはもちろん、長らくその基盤となっているバイエルン・ミュンヘンが幾度となく見せつけてきた“結果への妥協なき姿勢”が、強さとプライドを保つことに繋がってきた。もちろん、バイエルン・ミュンヘンにもグアルディオラの因子は刻まれているし、現ドイツ代表にもボールを支配できるだけのタレントは揃っている。だが多くのサポーターは、放り込みや泥臭いプレーもいとわず、より妥協なく、よりパワフルにゴールに迫るという伝統的な“ドイツらしさ”の復活を期待していた。後方でのボール回しに飛ばされた指笛には、「ドイツらしさが失われていくのを見ていられない」という思いが込められているようにも聞こえた。
19分にサネが同点ゴールを決めてみせたことで、サポーターにはドイツ国旗を一斉に振る機会が与えられた。それは、選手たちがここからドイツの威信をかけて激闘を繰り広げることになるのではないか……と思わせるのに十分な光景だった。
だが、そうはならなかった。
直後の22分にまたしても右サイドから上田綺世にゴールを許し、その後も日本ペースで試合が進むと、サポーターはまたしてもチームへの不支持に転じた。
前半終了の笛と共に一斉にブーイングが起こると、筆者は逆サイドに移動した。「後半はドイツを撮りたい」と試合前には思っていたが、この日はごく公平に見ても日本代表の方が圧倒的に魅力的であり、“強さ”を感じさせたからだ。
<後編に続く>