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「筋肉増強剤に該当する成分が複数確認された」木村ミノルはなぜドーピングに手を染めたのか…格闘技界を揺るがす“禁止薬物問題”を検証 

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布施鋼治

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posted2023/09/08 17:01

「筋肉増強剤に該当する成分が複数確認された」木村ミノルはなぜドーピングに手を染めたのか…格闘技界を揺るがす“禁止薬物問題”を検証<Number Web> photograph by Koji Fuse

9月2日、神妙な面持ちで記者会見に臨む木村“フィリップ”ミノル。RIZINによるドーピング検査の結果、禁止薬物「クレンブテロール」が検出された

 加盟団体を見てみると、日本陸上競技連盟、日本車いすラグビー連盟など、オリンピックやパラスポーツに関わる団体がズラリと並ぶが、それ以外にも極真会館などの団体も多数加盟している。注意書きを見ると、「加盟は国内統括団体に限ります」とある。一介の格闘技プロモーションであるRIZINは海外の検査機関に検体を送り、検査するというプロセスをとっている。

アンチ・ドーピングに関する知識を欠いた格闘技界

 また、JADAのホームページの「よくある質問」には、今回の木村の一件とも重なり合う「体内に摂り入れた成分はどのくらいで排出されますか?」という質疑が用意されていた。

 会見で木村は「クンタップ戦後、RIZINに出させていただくことが決まったので、ちゃんと抜いていたんですけど、体内にまだ残っていて検出された」と証言している。クンタップ戦は3月5日。ダリ戦までは3カ月以上の猶予があったので、「その間にクレンブテロールは体内からなくなる」という予想を立てたのだろう。

 排出期間に対するJADAの答えはこうだ。

「医薬品の種類に限らず、薬物の代謝速度には個人差(体格や代謝機能の差)などがあるため、排出期間については確定的なことは断言できません」

 つまるところ、ケースバイケースということだろう。クレンブテロールを摂取することによって、木村は確かな手応えを掴んだ。その一方で、薬物に関する細かな知識は持ち合わせていなかったことになる。

 いや、木村だけではない。いったいどれだけのファイターがアンチ・ドーピングに関する深い知識を持ち合わせているのだろうか。前述したようにタイトルマッチとグランブリ限定とはいえ、国内でWADAの禁止表国際基準(禁止される物質と方法が記載された一覧表)に準じた検査をしている格闘技団体はRIZIN以外にない。

 榊原CEOは「現状では、まだ何が正しいのかわからない」と唇を噛んだ。

「今までは性善説で取り組んでいた。(木村のようにドーピングの嫌疑があったとしても)選手・関係者の自己申告のもとに出場契約を交わしていた」

 今回の一件によって、日本のプロ格闘技界を取り巻くドーピングの状況は変わるのか。後編では、アマチュアスポーツとプロスポーツのドーピングに対する意識の違いや、国内外の格闘技団体における“実例”を深掘りしていく。

<後編に続く>

#2に続く
“ドーピング陽性”木村ミノルへの処分は適切なのか? UFCではミルコやアリスターも…根深い禁止薬物問題の本質「パンチ力が2倍、3倍に」

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