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朝倉未来は「格闘技に専念すべき」なのか? 衝撃タップアウト負けで“世界ランク”はフェザー級101位…時代の寵児が直面した“大きな壁”
posted2023/08/15 17:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
朝倉未来はどこに行くのか。
7月30日、『超RIZIN.2』でヴガール・ケラモフのチョークの前に一本負けした直後の彼のショボンとした佇まいを目の当たりにしたとき、ふとそんな思いが脳裏をよぎった。
ケラモフに完敗し「何もないです。言葉がない」
2021年6月13日、東京ドームで開催された『RIZIN.28』でクレベル・コイケに三角絞めで一本負けを喫して以来の衝撃をすぐに解読することなどできない。皮肉にも「朝倉未来のタップアウト負け」というサプライズは、大会にとてつもなく大きな余韻を残した。
振り返ってみれば、朝倉の主戦場であるRIZINフェザー級のベルトを巡るドラマは、ここ2カ月でいきなり大きなクライマックスを迎えたかのようにスピード感を増していた。ことの発端は6月24日に札幌で行われた『RIZIN.43』だ。当時王者だったクレベル・コイケは“MMAとキックの二刀流ファイター”鈴木千裕を挑戦者に迎えRIZINフェザー級王座の初防衛戦に臨む予定だったが、計量に失敗し、その場で王座を剥奪されてしまったのだ。
空位の王座を巡って、どんな試合が組まれるのか。一部のファンの間では「朝倉やクレベルが絡むトーナメントの開催」を期待する向きもあったが、RIZINサイドは『超RIZIN.2』で組まれていた朝倉未来vs.ケラモフを王座決定戦にするとアナウンスした。
誰の目から見ても「朝倉にチャンピオンになってもらいたい」という流れのように映ったが、フェザー級の“裏番長”金原正徳も対戦を熱望していたケラモフはアンダードッグではなかった。一般受けする存在だったとはいいがたいが、マニア受けしやすい堅実な強さを備えたファイターだった。
周知の通り、ケラモフはこれまでの地味なイメージを一掃するような獰猛なファイトで朝倉を料理した。試合後、インタビュースペースに現れた朝倉の右の頬には生々しいアザができていた。
「いまの気持ち? 特に何もないです。言葉がない」
今後について水を向けられても、朝倉の態度が変わることはなかった。彼の気持ちを代弁するかのように、決戦11日後に行なわれた記者会見で榊原信行CEOが朝倉について言及した。
「直接はまだ話していません。周りを介してコミュニケーションを取っています。ただ、これで引退することはない。どういう目標を立てて前に進むか。これからすり合わせていくことになります」