なぜ「過去の陽性者」は公表されなかったのか

　6月24日のRIZIN札幌大会。大会前々日の会見時から、対戦相手のダリは「アンチステロイド」と記されたタンクトップを着て木村の隆起した身体を皮肉っていた。

　木村に対する疑いの目が日増しに大きくなる一方だったので、RIZINの榊原信行CEOは札幌大会の総括で木村にドーピングチェックを課して調査すると語っていた。会見に同席した榊原CEOは「僕らからすると、『やっていないと言っていたじゃん。嘘をついていたの？』と。話にならない、というのが正直なところ」と怒りを露わにした。

　ショッキングな話は続く。榊原CEOは「彼の検体から筋肉増強剤に該当する成分が複数確認された」と語った。クレンブテロール以外の物質もあったということなのか。さらに、過去にもドーピング検査に引っかかった外国人選手がいたことを明かした。

「今まで公表はしていないけど、陽性反応が出た選手はいます。だから契約に基づいて罰金を課したり、改善が見られない場合は出場する機会がなくなっていくことになっています。でも、（陽性を隠す薬品もどんどん開発されているため）イタチごっこ。RIZINには出られなくても、ほかの大会に出ていった選手もいます」

RIZINの榊原信行CEOは木村への怒りと失望感を隠さなかった　©Koji Fuse

　なぜこれまで公表しなかったのか？

「検査結果で陽性という反応が出た場合、選手契約に基づき、我々と選手、あるいは派遣してきた団体とのやりとりの中で話は終わっています」

　その一方で、2015年の旗揚げ以来、タイトルマッチとグランプリ（トーナメント）に出場する選手に対しては「抜き打ちで検査を行なっている」とも話す。7月30日の『超RIZIN.2』でもタイトルマッチ出場の全選手の検査を行い、いずれも陰性だったという。

「PRIDE時代と違って、ドーピング検査については世界的に叫ばれていること。例えば（世界最大のMMAプロモーションである）UFCに出場する選手たちは、政府機関である現地のアスレチックコミッションが検査をしています。ただ、日本国内だとまだ発展途上で、きちんとしたレギュレーションはない」

　日本にはWADAの提携機関としてJADA（日本アンチ・ドーピング機構）が存在する。そのホームページには「世界アンチ・ドーピング規程」や「アンチ・ドーピングの歴史」など様々な項目が並ぶ。このサイトにアクセスすれば、誰でもアンチ・ドーピングについての知識を学ぶことができるというわけだ。

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