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「筋肉増強剤に該当する成分が複数確認された」木村ミノルはなぜドーピングに手を染めたのか…格闘技界を揺るがす“禁止薬物問題”を検証

posted2023/09/08 17:01

 
「筋肉増強剤に該当する成分が複数確認された」木村ミノルはなぜドーピングに手を染めたのか…格闘技界を揺るがす“禁止薬物問題”を検証<Number Web> photograph by Koji Fuse

9月2日、神妙な面持ちで記者会見に臨む木村“フィリップ”ミノル。RIZINによるドーピング検査の結果、禁止薬物「クレンブテロール」が検出された

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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Koji Fuse

格闘技界を揺るがす木村“フィリップ”ミノルのドーピング陽性問題。なぜ木村はドーピングに手を染めてしまったのか。本人に課されたペナルティは適切だったのか。そして「アンチ・ドーピング」の理念は、選手や関係者の間で十分に共有されているのか。プロ格闘技とアマチュアスポーツを長年取材してきた筆者が、問題を多角的に検証する。(全2回の1回目/後編へ)

「代謝が上がって、いつでも運動できる状態に…」

 やはり“噂”は真実だった。

 9月2日、RIZINは記者会見を行い、木村“フィリップ”ミノルがドーピング検査で陽性反応を示したことを明かした。契約に則り、罰金とともに半年間の出場停止処分が言い渡された。6月24日に札幌で行われた『RIZIN.43』のロクク・ダリ戦は、木村の1ラウンドKO勝ちから無効試合に変更された。

 RIZINの榊原信行CEOとともに会見に出席した木村は、昨年12月28日の『INOKI BOM-BA-YE × 巌流島』で行なわれたミックスルールの矢地祐介戦と、今年3月5日に『KNOCK OUT 2023 SUPER BOUT “BLAZE”』で組まれたクンタップ・チャロンチャイ戦の前に、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)で禁止薬物に指定されている「クレンブテロール」を3回ずつ使用したことを明かした。いずれの試合も木村が自慢のパンチ力を如何なく発揮した試合ではないか。

 薬物の摂取に抵抗はなかったのかという質問に対して、木村は「もちろん絶対ダメなこと」と頭を下げた。

「勝負するアスリートとして、すごくズルい選択だったと思う」

 本来クレンブテロールは気管支喘息など諸症状の緩和に用いられている薬品だが、その一方で筋肉増強の効能や脂肪を燃焼させる効果も明らかになっている。木村は「代謝をよくするために使っていた」と明かした。

「体重が落ちない時期だったので、減量中に使用していました」

 木村はK-1時代から「ステロイドを使っているのでは?」という疑いをかけられていたが、「使用したのはK-1を離れてから」と証言した。

「K-1時代にはドーピングチェックもなかった。知識もなかったし、使ったこともなかったです」

 ではなぜその後、ドーピングに手を染めたのか?

「K-1を離脱してから試合ができなくて、モチベーションを保てなかった。クレンブテロールはモチベーションを上げたり、身体のいい状態を保つためにも摂取していました」

 実際、効果は実感できたとも口にした。

「飲むだけで強くなれる薬は存在しないけど、代謝が上がって、いつでも運動できる状態になり、たくさんトレーニングできた」

【次ページ】 なぜ「過去の陽性者」は公表されなかったのか

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