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“裏番組”のBreakingDownに対抗心…「本物が殴り合ったらどうなるか」RISE新王者・YA-MANが壮絶な“命の削り合い”で見せつけた矜持
posted2023/09/03 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
「危なかった、マジで」
試合後、真新しいチャンピオンベルトとともに記者団の前に現れたYA-MANは安堵の微笑とともに本音を漏らした。
「視界がユラユラして、セコンドの声も…」
8月26日に東京・大田区総合体育館で行われた『RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round』。メインイベントで組まれた山口裕人との初代RISEオープンフィンガーグローブ(以下、OFG)マッチ-65kg級王座決定戦。YA-MANは2ラウンド1分5秒、右フックでKO勝ちを収めた。公約通りの「倒す闘い」を具現化したうえで初代王者に就いたが、戴冠に至るまでの過程は興奮とスリルの連続だった。
というのも、先制のダウンを奪ったのは山口の方だったのだ。1ラウンド開始早々、いきなり激しく打ち合う両者。先にもらった方が倒れる。そんな危険な距離での攻防が続いたが、先に相手の顔面を捉えたのは山口の左フックだった。おもむろにダウンを喫したYA-MANは立ち上がってきたが、ダメージが残っていることは明らかだった。
案の定、先制のダウンを喫したことについて、YA-MANは試合後に「1ラウンドのことは覚えていない」と振り返った。
「(立ち上がっても)視界がユラユラして、相手と審判のどちらが自分の対戦相手なのかわからなかった。セコンドの声も聞こえなかった」
この一戦が組まれた当初、大半の識者は「YA-MANがワンサイドでKO勝ち」と予想していた。無理もない。2021年5月にスタートしたOFG着用によるキックボクシングを牽引してきたのは、紛れもなくYA-MANだったのだから。
OFGマッチが始まる前、YA-MANはマニアしか知らない「その他大勢」のノーランカーにすぎなかった。デビュー戦は山口裕人の実弟・山口侑馬だったが、侑馬と比べてもYA-MANは実績で劣っていた。
この時点で、YA-MANのOFGマッチに期待している者はほとんどいなかった。筆者も含め、大半は侑馬を主役として見ていた記憶がある。しかしながら、巷の予想をあざ笑うかのようにYA-MANは侑馬に2ラウンドKO勝ち。一躍この新路線でクローズアップされるようになった。