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大谷翔平も菊池雄星も佐々木麟太郎も育った“ナゾの高校野球の町”「JR花巻駅」には何がある?「“消えた”レアな鉄道、閉店した百貨店…」
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/03 11:00
花巻東高校時代の大谷翔平。菊池雄星も佐々木麟太郎も輩出した花巻には何がある?
花巻駅の西側には、花巻温泉郷・花巻南温泉峡という名の知られた温泉がある。どちらも歴史は古く、坂上田村麻呂が発見したという伝説もあるほどだ。花巻温泉郷の中心を成す台温泉には、南部藩主もたびたび足を運んだという。本格的にリゾート温泉と化したのは大正時代の終わり頃で、温泉旅館を中心にテニスコートや動物園なども併設した花巻温泉が開かれる。それに合わせて、花巻駅からのアクセスを担うために、花巻電鉄の鉄道路線も開業している。
花巻電鉄は、ほかにも花巻南温泉峡に向けての路線も延ばしていた。いずれもレールの幅が762mmという特殊な仕様。普通の電車のレール幅が1067mmだから、それよりもだいぶ狭い。いわゆるナローゲージなどと呼ばれるもので、“馬面電車”などと呼ばれていたという。もちろん、宮沢賢治もこの馬面電車に乗っている。
花巻東高校の学生の自転車道に
花巻電鉄の路線は1972年には廃止されており、いまはその廃線跡が自転車道などになって残っているだけだ。花巻駅の西側から、その道をほんの少しだけ辿ってみる。実は、花巻温泉郷に向かう路線の途中に花巻東高校がある。だから、この自転車道は花巻を訪れた旅人のサイクリング道というよりは、花巻東高校の学生たちの通学ルートとしての機能がメインになっているようだ。道の脇には、「自転車走行マナーは大丈夫ですか?」という花巻東高校生徒会長名義の注意看板も立っている。もしかしたら、大谷翔平も菊池雄星も、この道を自転車で駆け抜けたことがあるのかもしれない(もちろん野球部には寮があるが……)。
最後に…じつは“わんこそば発祥の地”
いまの花巻の町は、花巻温泉や宮沢賢治の故郷などを巡る観光地としての性質が強い。観光で訪れた人は、駅前や中心市街地のホテルというよりは、花巻温泉に宿を求める人が多いのだろう。