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悪天候時のリスクに“トイレの故障”も…「本当に不安でなりません」開場から36年、湘南ベルマーレを悩ませる“スタジアム問題”の現状 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byEtsuo Hara/Getty Images

posted2023/08/30 11:01

悪天候時のリスクに“トイレの故障”も…「本当に不安でなりません」開場から36年、湘南ベルマーレを悩ませる“スタジアム問題”の現状<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

湘南ベルマーレがホームとして使用するレモンガススタジアム平塚(平塚競技場)。1987年の開場から36年が経過し、老朽化が進んでいる

 雨の試合は2月24日のホーム開幕戦を除いて、1万人を割り込んでいるのだ。アウェイチームのサポーターがアクセスしやすい横浜F・マリノス戦でも、9355人に止まっている。

 雨が降っても座席で傘を差すことはできず、合羽を着るなどしなければならない。年間シートホルダーならともかく、ライト層は観戦意欲を削がれてしまうだろう。チーム関係者によれば、「雨の日は2000人から3000人ほど減る」という。

 観客の来場意欲には「チームが強い」とか「日本代表選手がいる」といったものも含まれており、J1でつねに優勝を争うチームなら、天候の影響を抑えられるかもしれない。とはいえ、雨の日でも濡れずに観戦できるスタジアムもあるなかでは、レモンガススタジアム平塚に物足りなさを感じる観客がいてもおかしくないだろう。

スタジアムのサイズに起因する入場料収入の少なさ

 ベルマーレは『ターゲット35』という計画を打ち出している。35億円規模の年間予算を組み、J1優勝を果たすというものだ。

 2022年度は約25億円だった売上高を伸ばすために、クラブは入場料収入増を目ざす。ホームゲームの来場者増は、入場料収入だけでなくグッズやスタジアムグルメなどの収益増にもつながる。

 22年度のJ1クラブの入場料収入の平均は、7億円強である。浦和レッズ、川崎フロンターレ、横浜F・マリノスは10億円を超え、合計7チームが平均を上回るなかで、ベルマーレはリーグで2番目に少ない3億7000万円に止まっている。4億に届かなかったのはベルマーレとジュビロ磐田(現J2)の2チームで、両チームのホームスタジアムは1万5000人規模だ。

 その一方で、収容可能な人数に対して実際に動員した割合を示すスタジアム収容率で、ベルマーレはかなり健闘している。コロナ禍以前の19年シーズンは、J1平均の62パーセントを大きく上回る84パーセントを記録した。80パーセントを超えたのは、リーグトップの川崎フロンターレとベルマーレを含めて4チームに限られている。

 チームが「強い」ことは、もちろん大切である。ただ、入場料収入を増やす前提として、スタジアムの「サイズ」は見逃せない。

 では、新たなスタジアムを建設するにあたって、何がハードルになっているのか。後編では、予算や自治体との折衝をはじめとした実現に向けての課題を検証していく。

<後編に続く>

#2に続く
湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか

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