試合直前にトイレが故障…あわや試合中止に

　湘南ベルマーレも、かねてからスタジアムの在りかたを検討してきた。

　ホームゲームで使用するレモンガススタジアム平塚は、稼働から35年以上が経過している。昨年5月のJ1リーグ戦では、試合前にスタジアムのトイレが故障するというトラブルが発生した。20分以上も水が流れなくなってしまったのだ。

　両チームの選手はウォーミングアップ中で、キックオフは数十分後に迫っている。「そのまま故障していたら、選手も観客のみなさんもトイレが使えないので、試合を中止せざるを得なかったかもしれません。奇跡的に直りましたが、いつまた同じことが起こるかと思うと本当に不安でなりません」と、クラブスタッフは話す。

　Jリーグのスタジアム基準では、「観客席の3分の1以上が屋根で覆われていなければならない」とある。ところが、レモンガススタジアム平塚の屋根はメインスタンドの一部、全体の5パーセントほどだ。屋根のカバー率不足によって、ベルマーレはJリーグから制裁を受け続けている。

　制裁の内容は「対象スタジアム名の公表」と「屋根のカバー率不足への改善策もしくは構想の提出」となっている。ベルマーレが10年ほど前から新スタジアムについての議論を重ねてきたのは、制裁に対するクラブとしての努力義務を果たそうとしてきたからだ。

メインスタンドの一部にしか屋根がないレモンガススタジアム平塚　©Masashi Hara/Getty Images

落雷による事故のリスクも

　古い施設だから設備が故障するのもしかたがないと、許容するわけにはいかない事情がある。常態化しつつある異常気象だ。

　レモンガススタジアム平塚での試合開催中に、雷が発生したとする。観客を屋根のあるところへ避難させなければならないが、メインスタンドのごく一部しか屋根がない。メインスタンドの大半とバックスタンドの観客は、コンコースへ誘導することになる。しかし、満員の観客を収容していた場合、観客がコンコースから溢れてしまう可能性があるのだ。

　立見席の両ゴール裏には、そもそもコンコースがない。メインスタンドとバックスタンドのコンコースへ避難できなければ、隣接する平塚球場などへ駆け込むことになる。

　これまでのところ、Jリーグの試合開催時に雷に伴う大きな事故は起こっていない。しかし、発雷時の安全確保が担保されていないスタジアムは、レモンガススタジアム平塚だけではないのだ。そうした意味からも、見直しは火急を要する問題だ。

　屋根が一部しかないスタジアムは、観客動員の足かせにもなる。

　2023年シーズンのベルマーレは、ここまでホームゲームを12試合開催し、1試合平均1万247人の観客を集めている。天候に着目すると、人々の観戦動向が浮かび上がる。

【次ページ】　スタジアムのサイズに起因する入場料収入の少なさ