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悪天候時のリスクに“トイレの故障”も…「本当に不安でなりません」開場から36年、湘南ベルマーレを悩ませる“スタジアム問題”の現状

posted2023/08/30 11:01

 
悪天候時のリスクに“トイレの故障”も…「本当に不安でなりません」開場から36年、湘南ベルマーレを悩ませる“スタジアム問題”の現状<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

湘南ベルマーレがホームとして使用するレモンガススタジアム平塚(平塚競技場)。1987年の開場から36年が経過し、老朽化が進んでいる

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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Etsuo Hara/Getty Images

近年、Jリーグの複数のクラブがホームスタジアムに関する課題を抱えている。設備の老朽化や「屋根」の問題、そして必要十分のキャパシティなどをクリアするために新スタジアムの建設を模索するクラブも少なくないが、実現に向けてのハードルは高い。かねてスタジアムの在りかたを検討してきたJ1の湘南ベルマーレを例に、その実態を追った。(全2回の1回目/後編へ)

クラブスタッフの胸に刺さった「ある投稿」

 サッカーJ1リーグの湘南ベルマーレでは、七夕にちなんだ企画を毎年の恒例にしている。SNSに願いごとを投稿してもらい、その中のひとつを実現させるのだ。

 今年の投稿のなかに、クラブスタッフの胸に深く響くものがあった。

「以前はメインスタンドで観戦していたのですが、夫が病気を患って車いすで生活することになり、いまはピッチサイドの車いす席で観戦しています。もう一度、メインスタンドで観ることはできないでしょうか──」

 ベルマーレがホームとするレモンガススタジアム平塚は、平塚競技場として1987年に開場された。ほぼすべての移動が階段を前提とした構造となっており、スロープを見つけることはできない。メインスタンドに車いす用のスペースもなく、空間を確保することができたとしても、そこまでどうやって案内するのかという難題が待ち受ける。

 メインスタンドにエレベーターはあるものの、最上部から座席へ移動してもらうには階段を使わなければならない。エレベーターで上がっても、そこから座席への移動手段がない。クラブスタッフは何度も意見交換を重ねたが、安全な動線を見つけることはできなかった。

 Jリーグのいくつかのクラブが、スタジアムの整備に苦戦している。施設の老朽化などに伴う改修や増築、あるいは新築を検討しているのだが、自治体との折衝に時間がかかっているのだ。それにより、Jリーグから求められるスタジアムの基準を満たせないケースが発生している。

 Jリーグは将来的なホームスタジアムの整備を条件に、例外規定を設けてJリーグで戦うためのライセンスを交付している。「クラブライセンス」と呼ばれるものだ。

 例外規定には適用期間がある。スタジアムの整備計画を、定められた期日内にJリーグに示さなければならない。ところが、その方針を定めることができていないクラブが複数存在する。いわてグルージャ盛岡、ブラウブリッツ秋田、いわきFC、横浜FC、鹿児島ユナイテッドFCらが、ホームスタジアムにまつわる悩みを抱えている。

【次ページ】 試合直前にトイレが故障…あわや試合中止に

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湘南ベルマーレ
レモンガススタジアム平塚

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