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湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか

posted2023/08/30 11:02

 
湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

新スタジアム建設に向けて、ホームタウンである平塚市との折衝を重ねている湘南ベルマーレ。だが、実現に向けた課題は少なくない

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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Masashi Hara/Getty Images

近年、Jリーグの複数のクラブが悩まされている「ホームスタジアム問題」。J1湘南ベルマーレと平塚市も、新スタジアムの建設をめぐって交渉を続けている。建設候補地、費用負担の問題、そもそも新しいスタジアムを建設する意義……両者の間にある齟齬は“埋められない溝”なのだろうか。クラブ側と自治体側、双方の認識と課題をあらためて整理した。(全2回の2回目/前編へ)

「箱モノ」への疑問も…新スタジアム建設の意義

 2023年の日本社会は少子高齢化で生産年齢人口が減少しつつ、自然災害が頻発かつ激甚化している。高度経済成長期に整備した社会インフラが老朽化している。そうした社会情勢を踏まえると、新しい「箱モノ」を造ることに疑問の声が沸き上がるのも当然かもしれない。

 そもそも、なぜ新しいスタジアムが必要なのか。

 およそ三つの理由が考えられる。

 一つ目は地域活性化だ。駅ビルや商店街、ショッピングモールなどと連携して、新たな需要の創出が期待できる。充実した設備の新スタジアムならば、「Jリーグの試合を観たあとに、地元のグルメを楽しみたい」「買い物をしたあとでスタジアムへ行きたい」といったニーズに、応えることができるだろう。県外からの来訪者を呼び込む手段として、スポ―ツは価値の高いコンテンツと言える。

 二つ目は快適さの創出だ。昭和の時代に造られた競技場や球技場のなかには、車いす席、授乳室、多目的トイレなどが十分に整っていないものがある。スタジアム内の案内表示が、多言語に対応しきれていないスタジアムも少なくない。障害者や高齢者、さらには外国人観光客の観戦までを前提にすると、ユニバーサルデザイン化を迅速に進めたいはずだ。

 三つめは災害拠点としての位置づけだ。自然災害などが発生した場合の広域避難場所として、さらには防災品や食料品の備蓄場所となることが、スタジアムなどのスポーツ施設に求められている。

 スタジアムの老朽化、健全な経営環境の確保、防災拠点としての機能確保などの観点から、湘南ベルマーレは10年以上前から新スタジアム建設を検討してきた。トップチームがJ1とJ2を往復した時期を経て、2018年からは6シーズン続けてJ1で戦っている。J1定着からタイトル奪取へ目標をシフトしていい時期であり、クラブは2万2000人収容の新スタジアムの新設を平塚市に提案している。

【次ページ】 「新設より改修のほうが費用はかさみます」

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