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熱中症などで2頭が犠牲に…“伝統の祭”相馬野馬追の現場で何が起きていたのか?「あらかじめ策を講じていたが…」「日程変更には大賛成」

posted2023/08/26 17:01

 
熱中症などで2頭が犠牲に…“伝統の祭”相馬野馬追の現場で何が起きていたのか?「あらかじめ策を講じていたが…」「日程変更には大賛成」<Number Web> photograph by Akihiro Shimada

熱中症などによって2頭の馬が亡くなった2023年の相馬野馬追。人馬の安全のため、開催日程の変更が検討されている

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Akihiro Shimada

引退競走馬の“受け皿”として重要な役割を担う相馬野馬追。だが2023年は記録的な猛暑の影響により、熱中症などで2頭の馬が亡くなった。開催時期の変更や暑熱対策についての議論を進めながら、いかに伝統をつないでいくべきか――10年以上にわたって相馬野馬追を現地で取材する筆者が、同地における“馬と人の共生”をテーマに寄稿した。(全2回の1回目/後編へ)

記録的な猛暑が引き起こした「馬の熱中症」

 千年以上の伝統を誇る世界最大級の馬の祭「相馬野馬追」が、7月29日(土)から31日(月)にかけて、福島県の太平洋側に位置する相馬市、南相馬市などで行われた。

 参加した馬は361頭。甲冑をまとった騎馬武者たちを背に街中を進軍し、沿道を沸かせた。30日(日)には雲雀ヶ原祭場地で呼び物の甲冑競馬と神旗争奪戦が行われ、2万8000人ほどの観客を魅了した。

 出陣した馬の8割以上が元競走馬だった。相馬野馬追は、競走馬のセカンドライフ、サードライフにおける、非常に大きな受け皿となっているのだ。

 今年も、ブラックホール、クリスタルウイング、ダコール、マイネルスフェーン、アングライフェン、トーセンブレイヴ、キタサンチャンドラ、ウォースパイト、マドリードシチーといった元競走馬たちが、勇壮な姿を見せてくれた。

 しかし、一方で、残念な報せもあった。

 最高気温が35度を超えた7月29日と30日の両日にかけて、熱中症などのため111頭が救護され、うち2頭が亡くなったのだ。

 相馬野馬追執行委員会では、馬の熱中症予防に関する冊子を参加者らに配布したり、祭場地内の騎馬救護所に給水車を配置したり、沿道に散水したり、人馬の水飲み場を数多く設置するなど、あらかじめ策を講じていた。それでも、防ぎ切れなかった。

 同委員会が、今年の野馬追の執行実績に関する記者会見を開き、2頭の死について発表したのは8月7日のことだった。

「馬も熱中症になるのか」と驚いた人は多かったようだが、その直後、昨年の菊花賞を制したアスクビクターモアが、放牧先で、熱中症による多臓器不全で8月8日に亡くなったことがJRAから発表された。

 タフなGIホースが、馬の安全を考え尽くされた最高レベルの施設で、厳しく訓練されたスタッフに見守られながらも、熱中症で命を落とすことがある――というニュースは、ファンにとってショッキングだった。現役のGI馬の死と、野馬追に出陣した2頭の死は、SNSなどで重ねて語られるようになった。

【次ページ】 「日程変更には大賛成」現地で感じた猛烈な暑さ

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