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馬との関係は“家族同然”…「負担を考えて丁寧にケアを」相馬野馬追に見た“人と馬の共生のかたち”「相双地方にとって野馬追は特別」

posted2023/08/26 17:02

 
馬との関係は“家族同然”…「負担を考えて丁寧にケアを」相馬野馬追に見た“人と馬の共生のかたち”「相双地方にとって野馬追は特別」<Number Web> photograph by Akihiro Shimada

2023年の相馬野馬追、本祭りの締めくくり「帰り馬」で騎馬武者を背に引き揚げる馬たち。相双地方における“人と馬の共生のかたち”に迫った

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Akihiro Shimada

2023年、引退競走馬の“受け皿”として大きな役割を担う相馬野馬追で、熱中症などによって2頭の馬が亡くなった。これを受けて開催時期の変更が検討されるなど、千年以上の歴史を持つ伝統行事は変化のときを迎えようとしている。その一方で、実際に相双地方で暮らす人々が馬とどのように共生しているのかは、意外なほどに知られていない。毎年現地で相馬野馬追を取材する筆者が、騎馬武者と馬の“家族同然”の関係性を解説する。(全2回の2回目/前編へ)

相馬野馬追に向けた“馴致”とは?

 相馬野馬追には、宇多郷(相馬市)、北郷(南相馬市鹿島区)、中ノ郷(南相馬市原町区、飯館村)、小高郷(南相馬市小高区)、標葉郷(浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)の5つの騎馬会に所属する騎馬武者たちが参加する。

 中ノ郷郡代の佐藤弘典さんは、南相馬で生まれ育ち、48年前、小学校6年生のときに初陣を飾った。ノースヒルズの外厩として知られる大山ヒルズで、キッチンマネージャー兼、新人への乗馬の指導役として働いていた時期は出陣することができなかったが、10年ほど前故郷に戻ってから、また参加するようになった。佐藤さんは、馬術のインストラクターと審判の資格も持っている。つまり、野馬追と馬術、競馬すべての達人なのだ。

 現在は飯館村で暮らし、自宅から道を挟んだところに厩舎を構え、そこで3頭の馬を繋養している。

 馬はよく入れ替わるようだが、今年の野馬追で会ったときは、佐藤さんが行列で騎乗したキャノンストーム、研究馬を引退して昨年12月に来たばかりだというマイネルスフェーン、そして、野馬追に4、5回出陣しているグレイスフルリープがいた。

 10歳のキャノンストームは今年が初陣だという。旗指物や甲冑、和鞍などになれさせる、野馬追に向けた馴致はすでに終わっているのだが、今回の取材のために、どんなことをするのか、厩舎内の洗い場で見せてくれた。

 まず、洗い場につないで、旗指物を見せる。匂いを嗅がせたり、軽く体に触れさせたりしてから扇風機を回して、わざと音が出るようになびかせる。

「ほら、大丈夫でしょう。あまりやると嫌がる馬もいるので、反応を見ながらの作業になるんですけどね」と佐藤さん。

 次に、旗指物を竿から外して畳み、それで馬の顔を拭く。

「そして、これが相馬野馬追での、伝統的な旗指物へのなれさせ方です」

 佐藤さんはそう言いながら、旗指物をひろげて、馬の背中にかけた。

 キャノンストームは、ときおり耳を動かして佐藤さんの動きを確認する程度で、怖がったり、嫌がったりしている様子はなかった。

【次ページ】 法螺貝や甲冑にも動じることはなく…

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