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「甲子園に9度出場したのに…」あの名将はなぜ“高校野球から離れた”のか? いま明かすジレンマ「結果出すなら選手に頭を使わせない、が早い」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/08/27 11:00

「甲子園に9度出場したのに…」あの名将はなぜ“高校野球から離れた”のか? いま明かすジレンマ「結果出すなら選手に頭を使わせない、が早い」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「結果出すなら選手に頭を使わせないのが早い」。甲子園経験監督は高校野球からなぜ離れたのか

島田 そうそうそう。でも、バンバータジュニアなら、それ以外の価値観を伝えることができそうだな、って思ったんです。たとえば、極端な話ですけど、結果を早く出そうと思ったら、たくさん飯を食わせて、筋トレでパワーつけさせて、頭は使わせないというのがいちばん手っ取り早い。監督が力を持つ野球です。でも、スポーツのよさって、野球の魅力って、そこではないじゃないですか。監督がサインを出さなくても、一塁ランナーが「監督、走れますよ」って言ってくる。監督がキャッチャーにこう攻めたらとアドバイスしても、ゲームの中で自分が実際に感じたものを優先して配球を組み立てる。自分で考えるからこそ、野球はおもしろいわけじゃないですか。そういう力こそ、社会人になっても役立つ。打った打たないとかは正直、どうでもいいんですよ。打てなかったとき、次、どうやったら打てるようになるかを自分で考えられることが大事なわけで。

高知を離れ、東京で単身赴任

――高校野球を離れ、高知を離れ、物の見方が変わったなと実感するものですか。

島田 視野は広がったと思います。こっちにきたのが2020年5月だったので、新型コロナが流行し始めて、世の中がいちばん大変なときだったんです。そんな中、春に続いて夏の甲子園もなくなって。僕はそれまで野球しかしてこなかったので大変なことになったと思っていたんですが、世間は何ら驚いていなかった。こんな状況なんだから、当たり前でしょ、と。それがショックで。だから、そのときから、すごく考えるようになりましたよ。野球の存在価値って、スポーツの存在価値って、なんなんだろう、と。これからの指導者は、それをきちんと伝えられる人物でないとダメなんだな、と。

――ちなみに今は、東京で単身赴任をしているわけですよね。

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