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「高校球児なぜ丸刈り?の答えが出ず…」花巻東“大谷翔平の影響”で野球がメジャー化…佐々木監督が語る「雄星や大谷を見て、考え方が変わった」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/18 17:11
身長184cm、体重113kg(今大会最重量)の佐々木麟太郎。歴代最多の高校通算140本を誇る。甲子園ではここまで3試合で打率.500
一度、そのトレーニング指導に帯同させてもらったことがあるが、身体の芯が強くなる基本を徹底的に教えていた。
ただウェイトをして筋量をつけて、それを出し切ることを体に覚えさせるのではない。筋肉と関節をうまく使いこなし、正しく出力をする……そんなイメージだ。
「身体づくりから振る意識を持つと言いますか。そうしているからこそ、詰まったあたりが外野まで飛んで落ちたりとか。そういう結果につながっていると思う」(佐々木監督)
花巻東は今大会準々決勝までの3試合で34安打をマーク。180センチ超えのクリーンアップ3人は3番佐々木麟太郎こそ徹底的なマークにあってシングルヒットのみだが、4番北條慎治、5番千葉柚樹の2人で5本の長打を放っている。
「1番打者をあえて2番に配置する」
また、打順の組み方もメジャー的だ。
実は花巻東打線のキーを握っているのは、クリーンアップ「180センチトリオ」の前を打つ2番打者の熊谷陸だ。
本来、熊谷は1番打者だという。では、なぜ2番に配置しているのか。その理由が興味深い。
「例えば熊谷が1番で出塁して、バントで送ったところで3番の麟太郎が歩かされちゃう。これは攻撃としてどうなのかなということがありました。そこで熊谷と麟太郎をくっつけて、打順の2番から5番ぐらいまで厚みを出すようにしています。これで下位打線が出塁すると、もっと点数が入ってくるという風にしています」
至極真っ当な考え方だ。
日本の野球は形にこだわりすぎることがある。「4番」が崇高なものになりすぎて「4番」が誰であるかばかりを議論するところがある。「チームで最も良い打者は4番だ」という発想からいまだ抜け出せず、チーム作りも、メディアの取り上げ方も「4番」を中心に語られることがいまだに多い。
野球は演技点ではなく得点を競う競技であり、しかも高校野球はトーナメント戦で負けられない戦いの連続だ。形にこだわるよりも、いい打者ほど打席を多く回す形にした方がいいし、それらを並べて大量得点を上げる方が理にかなっている。
「麟太郎を2番にすることも考えました。北條、千葉の打順も1個ずつ上げてというのも考え方としてあるのかなと」
やはり佐々木の考えは真っ当だ。
「智弁学園さんの17試合を分析しました」
メジャーからの発想の輸入はそれだけではない。