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プロ野球“じつは育成選手を飼い殺している”問題「まだ8月なのに一軍の可能性ゼロ」「昇格率“わずか2%”の球団も…」あまりに厳しい待遇と現実
posted2023/08/06 11:03
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
プロ野球の今シーズンの新外国人獲得などの選手契約およびトレードなど譲渡可能期間が7月31日をもって原則終了した(ウェイバー公示による移籍は可)。あわせて育成選手についても、今季中に支配下選手登録される可能性がなくなった。3桁背番号の育成選手はファーム戦の出場しか許されていない。つまり、彼らはシーズンの3分の1以上が残っている段階にもかかわらず、一軍でプレーする可能性が消滅したのだ。
「昇格率2%」厳しすぎる支配下登録
今年、12球団で32名が育成選手契約から支配下選手契約への移行を果たした。最も多かったのは巨人の10名。今春のキャンプイン時点で48名いた育成選手のうち20%強が“昇格”を果たした。
ただ、そのうち「支配下復帰」が9名もいた。巨人では昨オフに多くの支配下選手が育成契約に切り替えられ、同時点で支配下登録選手が58名しかおらず、上限の70名にかなり余裕を持たせていたのが要因となっている。その点については日本プロ野球選手会とNPBの事務折衝の中でも問題提起がなされており、今後何らかのルールが導入される可能性もゼロではない。
その巨人よりも育成大所帯なのが、今季から球界初の四軍制を導入したソフトバンクだ。3桁背番号の選手を54名も抱えて今季をスタートさせていた。
しかし、その中から今季の支配下登録を勝ち取ったのはわずか1人だけ。
昇格率2%未満の壁を突破したのはルーキー右腕の木村光だった。昨年ドラフトの育成3位で佛教大学から入団。支配下登録された7月17日時点ではウエスタン・リーグで15試合(うち8先発)に登板して1勝4敗、防御率3.14の成績を残していた。一見パッとしない数字に映るが、最速150キロの質の高い直球と安定感のある投球が持ち味で、制球力や投球術に課題の多いソフトバンク投手陣においては興味深いタイプの投手。実戦向きと考えられている。
基準は「一軍で活躍できるレベル」の違和感
巨人とソフトバンクの大きな違いは、今季当初の支配下登録選手の人数だ。ソフトバンクは春季キャンプの時点で67名と、残り枠はこの時点で3つしかなかった。そのうえで6月にはデスパイネを再獲得。期限直前の7月にはリリーフ左腕のヘルナンデスも入団してきたため、木村光を育成から支配下登録しただけで「70人」が埋まってしまったのだ。