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「1位もあれば4位もあり得る」4年前より“シビアなW杯”に挑むラグビー日本代表が今、抱えている不安要素とは…「リーチ退場」は財産になる?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/07/25 11:01
頼れるリーチマイケル(写真)の一発退場など、予期せぬ展開となったサモア戦。14人での戦いで粘りを見せたが、攻守でミスも目立った
退場者が出たシチュエーションでの準備は、現代ラグビーでは必須である。ただし、日本の場合、選手たちは「相手側に退場者が出る」ことを想定していた節がある。春先、ある選手に話を聞いた時、こんな言葉が漏れた。
「W杯では、サモア、アルゼンチンにシンビン、レッドカードが出る可能性があるかもしれません。相手が14人になった時に、ゲームをどうコンロトールしていくか、とても大切だと思います」
自分たちが14人になることもあり得るのは頭では分かっていても、そこまでシリアスなものとは捉えていなかった気がする。
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しかしリーチの退場によって、突然、危機的状況に対応せざるを得なくなった。これは練習では到底演出できないシチュエーションである。
リーチ退場後の10分、致命傷となったトライ
そこからの前半の残り10分間は、難しかった。スタンドが沈んだと同時に、日本代表のエナジーもやや下がったように見えた。37分にトライを許し、前半を10対10の同点で折り返す。
当事者となったリーチは、レッドカード後の自分のリアクションに対して反省の弁を述べた。
「自分の気持ちの下がりはチームにとっても良くなかったかな。ハーフタイムは真っ白。もうやってしまったな、と思った。でも顔に出さないでポジティブにいるべきだったなと反省してます」
これは今後、チームにとって大きな財産になると思う。そして後半に入ってからの修正には見るべきものがあった。
着実にペナルティゴールを決め、後半21分には22対17とリードし、「フツーに勝てるかも」という予感を抱かせた。
ところが、そのあとのキックオフの処理がいけなかった。自陣22m内でスタンドオフ李承信が痛恨のノックオン。そこからのスクラムを起点に展開され、松島幸太朗がタックルを外され、一発でトライを奪われた。フランカーに入っていたジャック・コーネルセン、ナンバーエイトの姫野和樹のカバーが届かないサモア側の見事な設計だったが、ソフトなタックルが致命傷になった。