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「1位もあれば4位もあり得る」4年前より“シビアなW杯”に挑むラグビー日本代表が今、抱えている不安要素とは…「リーチ退場」は財産になる?
posted2023/07/25 11:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
9月に開幕するラグビーワールドカップに向けてテストマッチを重ねるラグビー日本代表。“本番”でも対峙するサモアとの一戦(札幌ドーム)は、リーチマイケルが退場処分となるなど評価が難しい試合となった。スポーツジャーナリスト生島淳氏がジャパンの現在地をレポートする。
最寄駅の福住駅から札幌ドームまで歩いていく途中、女子高校生が「リーチ選手のTシャツ売ってます」と声を上げている。
見れば、北海道ラグビーフットボール協会が発売しているオリジナルTシャツ。なるほど、リーチマイケルはナショナルヒーローであり、北海道では絶対的なローカルヒーローなのだなと感じた。
ところが——。前半30分、リーチにレッドカードが出る。一発退場だ。残念なことにこの日のサモア戦は、リーチの退場がハイライトになってしまった。
沈黙のスタジアム「勝てる試合を落とした」
この瞬間、スタンドの空気は重くなり、沈黙が支配した。2万2063人の観客にとって、ローカルヒーローの退場はあまりにもショッキングで、受け入れがたいものだった。
残りの50分間を14人で戦わなければならなくなった日本。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは会見でこう話した。
「レッドカードが出たことで、チームとしてのある程度の方向性は決まってしまった」
戦い方としては、ボールの所有率を高め、勝ちに徹するしかない。
結果は22対24。14人で戦って、わずか2点差。正直、勝てる試合を落としてしまった印象だ。
ワールドカップに向けてビルドアップしていくべき試合なのに、14人になってしまったことで評価は自ずと難しくなる。
ただし試合中、私はこうも思っていた。これは練習では演出できない状況を経験できるな、と。