Jをめぐる冒険BACK NUMBER
世界一を目標に掲げたU-20日本代表がW杯早期敗退…“うまい”の定義と「世界との差」を見直して…ここから“本当のキャリア”が始まる
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAP/AFLO
posted2023/05/30 17:00
喜ぶイスラエル陣営と落胆する北野颯太。U-20日本代表は3試合での帰還を余儀なくされた
76分の1失点目のシーンでは、佐野航大(岡山)からチェイス・アンリ(シュツットガルト)への弱いバックパスが相手に奪われ、アンリがファウルで止めざるを得なかった。このFKは壁に当たったものの、跳ね返りをシュートされ、ゴール前で合わされてしまう。このとき、安部がラインを上げられず、オフサイドを取れなかったのも痛かった。
「自分のミスなので、責任を感じます」と佐野は表情を曇らせた。
息を吹き返したイスラエルは猛攻を仕掛けてきたが、それでもまだ同点で、数的優位に変わりはなかった。だが、日本がボールを保持して相手を揺さぶったり、いなしたりするプレーは見られない。
できるはずのことができないほど選手は消耗していた
そして迎えた後半のアディショナルタイム、日本のコーナーキックをクリアされてカウンターを浴び、コンビネーションからゴールを破られた。その間、日本の選手は誰ひとりボールに触ることができず、右サイドバックの高井幸大(川崎フロンターレ)がボールウォッチャーとなり、ここでもオフサイドを取ることができなかった。
「ボールを見すぎてしまった。やられるべくしてやられた。自分のせいだと思っています」と高井は悔やむしかなかった。
土壇場で逆転された若き日本代表に、そこから同点に持ち込む反発力はなかった。
「負けてしまったことは現実ですし、これを受け止めないといけない。でも、まだ可能性としては残っているので、そこに希望をかけながら……」
松木はそう語ったが、それから約22時間後、日本の敗退が決まった。
3試合続けて後半に失速――。
その要因はコロンビア戦後のコラムに書いたとおり、ゲームの流れを読む力に欠けることに加え、普段の環境以上の強度に晒されているため、消耗が想像以上に激しいからだという考えに変わりはない。
「相手はリスクを負って攻めてきたけど、10人だからスペースや背後がすごく空いていた。幅と深さを取りながらボールを動かすことが彼らには十分できたと思うんだけど……」
冨樫監督はそう残念がったが、できるはずのことができないほど選手たちは消耗していたとも言える。ゲーム終盤、松木が必死に「ラインを上げろ」とジェスチャーで指示していたが、後方の選手たちはそうすることができなかった。
だとすれば、ベンチワークで選手たちを助けられなかっただろうか。
マネジメントでの悔いと、世界における自分たちの実力
1-1のままアディショナルタイムに入った直後、熊田直紀(FC東京)と北野颯太(セレッソ大阪)をピッチに送り出した。
冨樫監督は「前線からプレッシャーをかけるため。あとはリスタートで高さを補充して、落ち着かせて凌げれば」と1-1のままゲームを終わらせ、勝ち点4でグループステージを突破する狙いだったことを明かした。
しかし、ある選手は「勝ち越しを狙う交代策だと感じた」と語っているから、指揮官のメッセージは正確に伝わらなかったわけだ。
「マネジメントに関して悔いが残る」と冨樫監督は振り返ったが、1人多くなった残り30分間の戦い方をベンチが示せなかったのは痛恨だった。
一方で、世界における自分たちの実力をどれだけ把握できていたのか、疑問が残る。