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世界一を目標に掲げたU-20日本代表がW杯早期敗退…“うまい”の定義と「世界との差」を見直して…ここから“本当のキャリア”が始まる
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAP/AFLO
posted2023/05/30 17:00
喜ぶイスラエル陣営と落胆する北野颯太。U-20日本代表は3試合での帰還を余儀なくされた
このチームは22年2月末の立ち上げ時から「世界一」を目標に掲げてきた。今年3月のU20アジアカップでは3位に終わっているが、今大会のメンバー発表の際にも冨樫監督は改めて「世界一という目標は下げません」と宣言している。
高い目標を掲げて邁進していくのはいいが、自分たちの力を見誤り、そこに過信はなかったか。
昨年5~6月に行われたモーリスレベロトーナメントで、日本はコロンビアとアルゼンチンに敗れている。それから1年が経ち、W杯で再びコロンビアと顔を合わせることになったが、「アルゼンチンには完敗だったけど、コロンビアは勝てる試合だった」と話す選手もいた。
W杯というタフな国際舞台で技術を発揮できたのか
そのコロンビアに本大会で逆転負けを喫したあとも「このグループで組織力は日本が一番」という声があったし、イスラエル戦の前にも「90分間、日本がボールを支配できると思う」という声が聞かれた。
それがメディアへのリップサービスや自身を鼓舞する言葉ならいいが、本当にそう認識していたのだとしたら、彼我の差を見誤っていないだろうか。
この世代は10代後半の大事な時期にコロナ禍に見舞われ、U-17W杯やU-20W杯を含めて国際経験を積めていないから、その影響は大きいのかもしれない。
今回の代表チームには、「自分はうまい」と思っている選手、自らの技術に自信を持っている選手がたくさんいたはずだ。
だが、その技術は、何をもって“うまい”と言えるのか。
もちろん、国内で同世代と戦うぶんには、彼らはみんな突出した技術の持ち主で、存在感を放っている。だが、W杯という国際舞台ではどうだったか。
国を背負うという精神的なプレッシャーを感じながら、国際レベルの肉体的なプレッシャーを受けながら、その技術を発揮できたのか?
至る所で芝が剥がれて土が覗き、踏ん張りが利かない状態でも、中2日の試合間隔で疲労を抱えながらでも、その技術を発揮できたのか?
頭の中は、こんなはずじゃない、何かおかしい、のオンパレードだったのではないか。
国際レベルで“闘う”ことができていたのか
さらに言えば、技術以前の問題として、闘うことができていたのか。
ボールを奪い取り、国際レベルで闘えていたのは、松木、髙橋仁胡(バルセロナ)、福井太智(バイエルン)、チェイスくらいに感じられた。
今大会で失点の要因となった選手たちだけでなく、すべての選手に、ワンプレーが積み重ねてきたものを台無しにしてしまう現実を受け止めてもらいたい。