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松木玖生のPK失敗よりも…「後半に落ちるチームはW杯にいない」U-20日本代表がコロンビアに突きつけられた“試合の機微と強度の欠如”
posted2023/05/26 11:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Hector Vivas - FIFA/Getty Images
土壇場でゲームを振り出しに戻すはずのボールがバーを叩いたとき、日本の敗戦は半ば決まった。
エースが、まさかのPK失敗――。
痛恨の極みといった様子で天を仰ぎ、両手で顔を覆った松木玖生(FC東京)は試合後、その瞬間についてこう振り返った。
「もっと平常心でコースを狙えばよかったですけど、自分の中で真ん中に強いボールを蹴ると決めていたので……」
アルゼンチンで開催されているU-20ワールドカップのグループステージ第2戦。日本はコロンビアに1-2と逆転負けを喫してしまった。これで1勝1敗となり、なんとか2位につけている。
82分に獲得したPKを松木が決めていれば、勝ち点1は取れたかもしれない。
しかし、コロンビアと日本の間に、決して小さくない差があったのも事実だ。左サイドハーフとして先発した北野颯太(セレッソ大阪)は「すべてにおいて相手のほうがひとつ、ふたつ上やったかなと思います」と評した。
ビルドアップ、セットプレーには工夫が見えた
もっとも、前半の出来は決して悪くはなかった。
ボールを支配したのはコロンビアだったが、日本もただ守っていたわけではない。試合前、センターバックの田中隼人(柏レイソル)が「コロンビア戦ではもっとビルドアップしていきたい」と語っていたように、日本もボールを動かして攻撃を構築したり、ゲームを落ち着かせたりする時間を作れていた。
その際、カギを握ったのが山根陸(横浜F・マリノス)の立ち位置だ。サイドバックとセンターバックの間に臨機応変に落ち、ビルドアップを助けるとともにサイドバックを押し上げる役目を果たす。山根が振り返る。
「全員がいいポジションを取ってボールを運ぶというのがチームのコンセプト。その中で2センターバックが相手2枚に見られていたので、最初は間で覗いていましたけど、センターバックも出しづらそうだったので、一回割り切って外にポジションを取ってみたら案外受けられた。
そこで相手がどう変化するか見ていたんですけど、修正する感じがなかったので、(福井)太智(バイエルン)と玖生との距離感だけ離れすぎないように意識して、うまくボールが入った。自分が前を向いたときもみんながいいポジションを取れていたので、 僕としては窮屈感も孤独感もなく、やりやすかったです」