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デゼルビ監督が大はしゃぎの深夜パーティー、三笘薫は欠席した納得の理由…ブライトン最終戦の取材席では英国人記者が「ミトマは…ビッグクラブに行くね」
posted2023/05/31 18:38
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph by
Getty Images
三笘薫のプレミアリーグ挑戦1年目が終わった。
日本代表MFは国内リーグで7ゴール、5アシストを記録し、FA杯とリーグ杯を合わせた公式戦全体では10ゴール、7アシストの成績で1年を終えた。シーズン終盤はゴール、アシストのペースが落ちたが、英BBC放送で今季最も驚きをもたらした選手に贈られる「サプライズ賞」の候補に選ばれるなど、サッカーの母国イングランドで大きなインパクトを残した。
取材で強く印象に残っているのは、三笘がボールを持った場面でのスタジアムの興奮である。
イングランドのファンも、三笘がドリブルで勝負を仕掛けるのが分かっているのだろう。三笘にパスが入るとグッと息を飲み、スタジアムは一瞬だけ静かになる。三笘は「さぁ、抜くぞ」と言わんばかりに一度立ち止まり、鋭い切り崩しから一気に仕掛ける――。日本代表が左サイドを突破すると場内が一気に沸き、そのままゴールに導くと歓声が爆発した。こうした光景を、今シーズンの現地取材で何度も目の当たりにした。
三笘の活躍は、英国人記者をも驚かせた。プレミアリーグ最終戦のアストンビラ戦で取材席が隣だった英紙デーリー・テレグラフのマット・ロウ記者は、三笘について「ワォという感じ。やはりすごくいいね」と話しかけてきた。普段はチェルシーとトッテナムを取材している同記者に、「途中出場だったこともあり、今日は平均的な内容だったと思いますよ」と返すと、ロウ記者は目を丸くし「才能の片鱗が随所に確認できる。ビッグクラブに行くだろうね」とうなずきながら絶賛していた。
日本人の“鬼門”「バケモノみたいな選手ばかり」
しかしこれまでプレミアリーグは、日本人選手にとって「鬼門」とされてきた。イングランドのサッカーは接触プレーが激しく、攻守の切り替えも異様なほど速い。欧米の選手に比べ、フィジカルで劣る日本人選手にとって、そのハードルは非常に高いとされてきた。
実際、2015年にレスターに加入した岡崎慎司は当初、プレミアリーグを「個の力がバケモノみたいな選手ばかり」と表現した。当然チーム内のレギュラー争いも熾烈を極め、岡崎の場合は積極的に守備をこなす”守備的FW”として自身のアピールポイントを確立する必要があった。そうでもしなければレギュラーの座を勝ち取るのは難しかった、と岡崎は話していた。
また2012年からサウサンプトンに在籍した吉田麻也も、加入してまもなく肉体改造に着手した。当たりの激しいプレミアに適応するため、時間をかけて体重を8キロほど増量。接触プレーに負けない鋼の体を作った。両選手とも、入団当初にプレミアリーグの「壁」を少なからず感じたのであろう。
だが2006年からプレミアリーグを取材する筆者の目には、三笘はそうした第一関門を優に突破しているように見えた。相手DFを軽々とかわし、スピードに乗ったドリブルでサイドを切り裂く光景は、少なくともこれまでの日本人アタッカーでは見ることがなかったからだ。
「プレミアは…今のところは感じていないですね」
興味深いのは、シーズンが進むにつれ、三笘の発言が変遷していったことである。