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MotoGPを席巻する“VR46軍団” 引退後も影響力を増すレジェンド・ロッシの情熱と弟子同士のチャンピオン争いの可能性
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/04/08 11:00
開幕戦ではバニャイア(右)が1位、ベツェッキが3位と、ふたりのVR46アカデミー出身者が表彰台に上った
バニャイアは2018年にMoto2王者となり、ドゥカティに移籍して昨年のMotoGP王者となった。アカデミー出身のライダーはまだいる。2017年のMoto2王者フランコ・モルビデリは、現在ヤマハからMotoGPに参戦。ロッシの異父弟ルカ・マリーニも、2021年からVR46のライダーとしてMotoGPで戦っている。
ライダーの活躍もさることながら、VR46のチーム運営にも目を瞠るべきものがある。過去にも現役を退いてチームオーナーになったライダーは多くいたが、ロッシほど着実にチーム規模を拡大してきた人はいない。チームを運営するだけではなく、若手ライダーの育成をしながら、ドゥカティ、ヤマハのワークスチームに弟子を送り込み、自身が運営するチームもワークスチームと肩を並べるまでになった。26年にわたってグランプリで戦い続けた原動力を「レースへの情熱」と語ってきたロッシだが、その情熱はいま若いライダーたちに注がれている。
サーキットで拡大するVR46の影響力
オーナーがレジェンドなだけにスポンサー獲得が容易で、そのためにチーム運営が順調だという事情もあるだろうが、Moto3からMotoGPに至る参戦の過程は、現役時代のロッシがレースで着実にセットアップを進め、ペースを上げていくのと似ている。そして最後の1周で驚くようなタイムを出すのだ。
現在のVR46はドゥカティ、ヤマハと良好な関係にあり、昨年から「ヤマハVR46マスターキャンプチーム」を結成しMoto2に参戦している。今年は日本人の野左根航汰が参戦しているが、開幕戦で怪我を負い、アルゼンチンGPには南本宗一郎が初参戦して元気あふれる走りを見せた。さらに、今年からMoto2に参戦するイタリアのバイクメーカー「ファンティック」もVR46とのコラボチームで、アカデミー出身のチェレスティーノ・ビエッティが参戦。VR46の影響力はますます拡大している。
初優勝のベツェッキ、2連覇に挑むバニャイア、初優勝の日がそう遠くないマリーニ。そしてモルビデリは左膝の怪我からやっと復調してきた。VR46アカデミー出身のライダーたちの最高峰クラスの優勝回数は「16」となり、同門によるチャンピオン争いも現実のものとなりそうだ。
引退した今も、ロッシの存在感は増すばかりである。
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