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MotoGPを席巻する“VR46軍団” 引退後も影響力を増すレジェンド・ロッシの情熱と弟子同士のチャンピオン争いの可能性
posted2023/04/08 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
MotoGPは開幕2連戦を終え、マルコ・ベツェッキが50ポイントで首位、フランチェスコ・バニャイアが41ポイントで2位につけるという滑り出しとなった。
第2戦アルゼンチンGPでは、ベツェッキがスプリントレースで2位、決勝レースで独走優勝し、「Mooney VR46 Racing Team」に参戦2年目にして初勝利をもたらした。このチームのオーナーはロードレースのレジェンド、バレンティーノ・ロッシで、ベツェッキはもちろんバニャイアもまた、ロッシが若手育成のためにスタートさせた「VR46アカデミー」出身のライダーである。
初優勝したベツェッキは、その喜びをこう語った。
「私とチーム、そして家族とアカデミーにとって優勝することが夢だった。しかもチャンピオンシップをリードしているなんて、信じられない。この2戦はすべてが完璧だった。ここはMoto3で初めて優勝したサーキット。MotoGPでも初優勝することが出来た」
アルゼンチンGPは不安定な天候が続き、決勝の日曜日は朝から雨が降った。ベツェッキは朝起きてそれを知ったとき「うれしくなかったし、不安になった」と振り返る。しかし、フィーリングがよかったウォームアップをトップタイムで終えたとき、「今日はいいレースが出来るかもしれない」と思ったのだそうだ。
いまだ黄色に染まるサーキット
ベツェッキが優勝したとき、ロッシのトレードマークの黄色のウエアに身を包むファンは沸きに沸いた。サーキットにはいまだにロッシファンが大勢詰めかけていて、彼らはベツェッキがレジェンドの愛弟子だとよく知っているからだ。
ロッシが若手育成のために「VR46アカデミー」を創設し、チームオーナーとしてグランプリに参戦したのは2014年のことだった。最初はMoto3クラスに出場し、2020年まで参戦した。並行してMoto2クラスに2017年から2022年まで参戦。最高峰のMotoGPクラスには、2021年に他のチームとコラボする形で参戦したが、2022年からはVR46として独立。ベツェッキの優勝はわずか参戦2年目での快挙だった。