熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER

侍ジャパンの「WBC優勝賞金4億円」、W杯は「ベスト16で21.2億円」“横暴なMLB運営”の改善をマイアミ現地観戦後に願う 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2023/04/05 17:01

侍ジャパンの「WBC優勝賞金4億円」、W杯は「ベスト16で21.2億円」“横暴なMLB運営”の改善をマイアミ現地観戦後に願う<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

日本国内に熱狂をもたらしたWBC。その一方で大会全体の運営についてはいまだに改善されるべきポイントは多い

 結論から言うと――冒頭に挙げた5つの疑問点はすべて、フットボールにおけるFIFAのように、世界各国のプロを含む協会やリーグを統括する組織が野球に存在せず、WBCを運営するのがアメリカのメジャーリーグベースボール(MLB。厳密に言えば、MLBとMLB選手会が設立した団体)であることが最大の原因と考えている。

 野球にも、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)という団体がある。国際野球連盟(IBAF。1938年創設)と国際ソフトボール連盟(ISF。1952年設立)が2013年に合体した組織で、スイスに本部を置き、137の国と地域が加盟する。しかし、これはアマチュア野球を統括する団体であり、プロ選手を含む世界トップレベルの国際大会を開催する権限は持たない。

五輪競技から外れた中、過去WBCはトップ選手が

 五輪ではフットボールは1900年大会以降、ほぼ常に正式競技として実施されており、非常に人気がある。これに対し、野球は1992年、ソフトボールは1996年大会で初めて正式競技に採用されたものの、メジャーリーガーが参加しないため最高峰の大会とはみなされず、2008年大会を最後に正式種目から除外された(2020年大会以降は、開催国の意向によって実施の可否が決まる)。

 2005年、IOCが将来的に五輪から野球を除外する方針が明らかになると、野球の世界的な普及に危機感を抱いたMLBが「プロ選手も参加する世界最高の大会」という触れ込みでWBC創設を発表した。日本野球機構(NPB)と選手会はMLBに有利な利益配分を不服として一時は不参加を表明したが、最終的に参加を決断した。

 2006年3月に第1回大会が開催されたが、時期がシーズン前とあって多くのMLB球団が選手の故障や調整上の問題を理由に選手の出場を認めなかった。また、出場に興味を示さない選手も少なくなかった。以後、回を追うごとにMLBの球団と選手から大会参加への理解と意欲が高まりつつあるが、W杯のように世界のトップ選手がこぞって出場する大会とは言い難い。

真の世界最強決定戦がなかなか実現しない“2つの理由”

 今大会では、過去に比べて観客動員もTV視聴者も増えた。しかし、地元アメリカは野手こそベストメンバーに近い陣容だったが、投手陣は有力選手の多くが欠場。現地観戦やメディアに触れた身として、ファンの関心は、日本とは比べものにならないくらい低かった。

 決勝ラウンドが行なわれたマイアミのローンデポ・パークの収容人員は3万7000人弱で、MLBの全30チームの本拠地の中で3番目に少ない。アメリカ代表の準々決勝ベネズエラ戦、準決勝キューバ戦では、対戦相手のチームのファンの方が多く「シーズン前の外国代表とのオープン戦」に近い扱いだった。

【次ページ】 真の世界最強決定戦がなかなか実現しない“2つの理由”

BACK 1 2 3 4 NEXT
#大谷翔平
#村上宗隆
#マイク・トラウト
#カタールW杯

プロ野球の前後の記事

ページトップ