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「『千代の富士引退』ってテロップがサザエさんのおでこに」まさかの速報に本人も仰天…千代の富士“伝説の引退会見”はこうして生まれた

posted2023/04/02 17:11

 
「『千代の富士引退』ってテロップがサザエさんのおでこに」まさかの速報に本人も仰天…千代の富士“伝説の引退会見”はこうして生まれた<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1991年5月14日、引退会見で涙を浮かべる千代の富士。「体力の限界! 気力もなくなり…」という“名言”はいかにして生まれたのか

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荒井太郎

荒井太郎Taro Arai

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圧倒的な強さに狼のような鋭い眼光、そして美しく鍛え抜かれた肉体――引退から30年以上が過ぎた現在もなお、“伝説の横綱”として語り継がれる千代の富士。幕内最高優勝31回、通算1045勝をあげ国民栄誉賞も授与された大横綱は、貴花田(のちの貴乃花)ら新世代が台頭するなか、どんな思いで土俵を去ることを決めたのか。在りし日の本人の証言を交えながら、現役晩年から引退に至るまでのドラマに迫った。(全2回の2回目/前編へ)

 1991年の夏場所。世間の注目は何と言っても、幕内最高齢35歳の常勝横綱と、関取最年少18歳の新鋭の対決だ。場所前の横審稽古総見では「盛り上げようというサービスでね」という第一人者の心憎い演出により、ぶつかり稽古で貴花田が千代の富士の胸を借りる場面が実現し、周囲は色めき立った。

 わずか数分の“邂逅”であったが、体で受けた感触は「どこからでもかかって来い。力でねじ伏せてやるという感じだったよ」というものだった。しかし、マスコミ陣は戦う前から両者の対決を世代交代の大一番として煽り立てる。「負けても引退しないよ」と本人が釘を刺したにもかかわらず、一度醸成されたムードはなかなか容易には打ち消せない。

「みんな聞きたがるから『俺が負けたほうがいいのか』って、そんなやり取りをしたことを覚えているよ(笑)」

初日に実現した“世紀の対決”の結果は…

 この場所は4横綱のうち、大乃国と北勝海の2横綱が休場。この場合、出場する2横綱の初日は東西の両小結との取組がそれぞれ組まれることが慣例だが、相撲協会も粋な計らいでファンの期待に応えた。西の張出横綱千代の富士に西前頭筆頭の貴花田をぶつけてきたのだ。

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