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チェコ史上初の「野球テレビ中継」、選手の本業は「地理教師・消防士・金融アナリスト」…WBCチェコ代表を“絶対好きになる”話
posted2023/03/11 11:02
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph by
Getty Images
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の東京プールが始まる前日、公式練習のため東京ドームに初めてやって来たチェコ代表チームは、まるで修学旅行で訪れた少年たちのようだった。ビジター側のクラブハウスに着くや否や、着替えもせずにそのままベンチ横の通路を抜けてフィールドへ直行。
「おぉー」
感嘆の声を上げ、目を輝かせた。全員が一様に天井を見上げたまま、目を離さない。何人もの選手がスマホで写真を撮り、中にはクラブハウスからずっと動画を撮り続けている選手もいた。
「僕ら、こんなに大きな球場で野球をやったことないんだ。屋根のある球場を見るのも初めてなんだよ」
興奮気味に語ったのはペテル・ジーマ内野手(33)だ。東京ドームを覆う格子状の白い天井――それは彼らにとって、まさに未知との遭遇だった。
相撲、どこに行ったら見られるの?
屋根のある球場だけでなく、選手たちのほとんどは日本に来ること自体が初めて。だからこそ目にするものすべてが新鮮だった。ジーマはうれしそうにこう続けた。
「日本の文化も食べ物も気に入ったよ。スシに、ラーメン。何ていう名前だっけな、あのラーメンは……。とにかく辛くておいしかった。日本の文化や伝統もいいね。お寺とか、細かいディテールにこだわるところとか」
ディテールとは?
「例えばレストランで、箸の置き方とかもてなしの仕方とか。何でもきちんとした決まり、約束事がある。(土俵に上がってから儀式がある)相撲もそうだよね。実はすごく相撲を見に行きたいと思っているんだ。どこに行ったら見られるの? 連れていってほしい」
そう言って人懐っこそうな笑みを浮かべた。
チームの大黒柱は「本業・消防士」
チェコ代表は、昨秋にドイツで行われた予選A組(ヨーロッパ・アフリカのチームが出場)で快進撃を続け、下馬評を覆して本大会初出場を決めた。世界の野球ファンを驚かせ「シンデレラ・ストーリー」とまで呼ばれたサプライズだった。