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33歳石川遼、なぜ米ツアー再挑戦を決めたのか?「(松山)英樹が活躍している今なら…もう一度やらせてあげたい」関係者が漏らした本音
posted2024/11/15 17:01
text by
塩畑大輔Daisuke Shiohata
photograph by
KYODO
華やかな会場でひとり、もがき苦しんでいた。
2024年10月22日、習志野カントリークラブ。薄暗くなったドライビングレンジに、最後まで残る人影があった。
ショットを打っては、うつむいて考え込む。スマホで撮影してもらった動画を確認しては、また考え込む。手にはキャロウェイのクラブ。トラビス・マシューの白いウェア。石川遼、その人だった。
午後5時。遠巻きに見守るギャラリーに、警備のスタッフが閉場時間になったことを告げだした。
それに気づいた石川は、ロープ際に歩み寄りサインを始めた。喜ぶギャラリーを、微笑みで見送る。だが、振り返った表情は硬く、沈鬱にも見えるものだった。
再び打席に戻ってクラブを握る。あたりは完全に暗くなっていた。
「今日は軽くショットの練習を…」のはずが
クラブハウスに引き揚げる途中に、池を渡る橋がある。暗い水面になんとなく目をやりながら、ポツリとつぶやく。
「いくらやってもうまくいかない。こんなにうまくいかないことってあるかな」
この週は、PGAツアー(米国男子)で唯一の日本開催である『ZOZOチャンピオンシップ』の期間だった。
開幕2日前のこの日、石川は昼ごろに会場に入った。
練習ラウンドはせず、ドライビングレンジに直行。同行するスタッフは「今日は軽くショット練習をして帰ると思います」と話していた。
だが、練習は想定外に長くなった。
打ち出しから右にそれていく。あるいは、右に打ち出したものの、大きく左に曲がっていく。テイクバックから、ダウンスイングに移るあたりの動きを確認するが、なかなか修正できない。
2時間を過ぎたあたりから、ショットよりも考え込む時間が長くなってきた。これはよくあることなのだろうか。
「いや、これは……今までにないかもですね」
少し離れたところで見守っていた佐藤賢和キャディが、重くつぶやく。練習時間は結局、5時間以上にも及んだ。