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チェコ史上初の「野球テレビ中継」、選手の本業は「地理教師・消防士・金融アナリスト」…WBCチェコ代表を“絶対好きになる”話
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/03/11 11:02
予選大会で快進撃を続け、下馬評を覆してWBC本大会初出場を決めたチェコ代表。知れば必ず「応援したくなる理由」とは
本大会に参戦するチームには、エンゼルス大谷翔平投手(28)のような世界のトッププレーヤーを含むメジャーリーガーやプロ選手がズラリ。その点、チェコ代表はアマチュアリーグの選手が主体のチームだ。
野球では当然、生活していけないため、ほぼ全員が「仕事」を持つ社会人か学生で、昼間は働きながらアマチュアチームで野球を続けている。前出のジーマは金融アナリスト、エースのマルティン・シュナイダー投手(37)は消防士、マルティン・チェルベンカ捕手(30)はセールスマン、アルノシュト・デゥボピー外野手(30)は高校の地理教師、マレク・ミナリク投手(29)は不動産会社勤務……と、仕事はみんなバラバラ。シュナイダーは消防士という仕事柄、24時間連続で勤務につき、次の48時間が休養日、そしてまた24時間勤務という独特の形態で働いているため、3日に1回は練習を休まなければならないという。それでもチームの大黒柱として活躍し、負けたら敗退という予選大会の最終戦で先発マウンドを任され、ヨーロッパで強豪とされていたスペインを相手に6回1/3をわずか1失点で5奪三振と力投。本大会出場を決める立役者となった。
加えてシュナイダーは大谷と同じく、二刀流選手でもある。遊撃手兼投手を務めるチームの要。それだけに二刀流で世界のトップに立つ大谷と同じフィールドに立つことの意味の大きさを、人一倍感じている。
「夢がかなったような気分。その瞬間を楽しみながら、噛み締めたい。オオタニやダルビッシュだけじゃない。ロウキ・ササキのことも僕らは知っているよ。彼らと対戦できるこの大会は、本当に夢の舞台だ」
グッと来る「WBCが夢だった理由」
夢の舞台――シュナイダーが目を輝かせながら続ける。
「7歳から野球を始めて、30年間続けてきた。子どもの頃から、いつかメジャーリーガーになりたいと思っていたんだ。僕だけじゃない、代表メンバーみんな、それを夢見てやってきた。でも、野球が盛んではない小国・チェコで、そのチャンスは極めて少ない。だから、ではないんだけど、僕らにとってWBCこそが“メジャーリーグ”なんだ。大観衆の前で、世界のトップクラスの選手を相手に戦えるんだからね」
そんな熱い思いを語ってくれたシュナイダーも、日本に来るのはこれが初めてだという。野球以外で驚いたことは?