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〈たっちゃん〉ヌートバーの幸せな「日米+家族に愛されまくり」野球人生 元巨人マイコラスいわく「ラーズへのアドバイスは…」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNanae Suzuki
posted2023/03/10 17:22
ハッスルプレー連発の「たっちゃん」ことラーズ・ヌートバー。日本の野球ファンの心をわずか数試合で鷲掴みにしている
「まったく信じてなかったんです。本心から。でも11月か12月だったか、栗山(英樹)監督から水原一平通訳を通して電話がかかってきたんです。『(出場資格の確認で)ラーズ選手のお母さまのパスポートについて教えてほしい』と。でも、そのあと連絡がなかったので、『とりあえずの確認だったのかもしれない』と思ったところに、『この日に栗山監督と一平さんとZoomがある』ってラーズから聞かされて、ええええええって(笑)」
ヌートバーにとっても久美子さんにとっても青天の霹靂だった日本代表への誘い。しかしこれが「サムライたっちゃん」のスタート地点だった。
栗山監督の頭の中には昨年5月からあった
<名言2>
野球界にプラスになるかどうかっていうのはすごく考えました。
(栗山英樹/NumberWeb 2023年2月12日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/856425
◇解説◇
ヌートバー側、さらに言えば日本の野球ファンのほとんどが驚きを隠せなかったヌートバーの代表招集だが……日本の野球界が新たな代表チーム作りへと踏み出す第一歩という大きな意味があったようだ。実は日本生まれではない日系メジャーリーガーの招集案は栗山監督の頭には昨年5月くらいからあり、10人前後の候補選手の状況を調べながら可能性を探ってきたそうだ。さらに招集の決断には、世界情勢を踏まえてのものもあったようだ。
「周りの信頼できる人たち、野球じゃない世界の識者たちにも『どう思います?』って意見を聞きました。そうしたら野球のグローバル化という視点もあったし、(ロシアとウクライナの)戦争も大きかったですね。いまだにこの時代に戦争が起こるなんて誰も思っていなかったし、隣で外国の人と普通に接していたら、そんなことも起こらないんじゃないかとかも思うじゃないですか。そういう色んなことを考えたとき、野球の持つ意味みたいなことを考えたときに、やってもいいんじゃないかなと思い始めました」
中国戦の8回裏のこと。打席に立ったヌートバーは――全力プレーの影響もあったのか――足を気にする仕草だった。栗山監督は水原通訳を連れて様子をうかがった。しかしヌートバーは“大丈夫”とばかりに打席に戻ってしっかりと四球を選んで代走を告げられてベンチに戻ると、チームメートや東京ドームの観客から大きな拍手を送られた。さらにチーム全体でも大谷や山田哲人らタイムリーヒットを放った選手が「ペッパー・グラインダー(コショウ引き)」を披露するシーンも話題だ。
久美子さんは中国戦後、代表取材に対して「まだ信じられないというのが本音ですね」と心中を語っていたが……ヌートバーは言語の壁を越え、すでにチームの一員として完全に融合している。