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メッシ愛妻の両親経営スーパーに銃弾14発!「W杯オウンゴール射殺事件」「数千万円の強盗」…“南米の凶悪事件”に名手が狙われた真相
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/03/13 17:00

カタールW杯優勝後のメッシファミリー。妻アントネーラさんの両親が経営するスーパーマーケットに銃弾が撃ち込まれるとは……。
アルゼンチンのみならず、中南米各国の治安は全般に良くない。とりわけ都市部では凶悪な犯罪が頻発し、各国の有名選手がその犠牲となったケースが少なくない。
世界が悲しみに暮れたエスコバルの射殺事件
最も顕著な例が、1994年7月、コロンビア代表CBアンドレス・エスコバルが射殺された事件だろう。まだ27歳の若さだった。
当時、コロンビア代表には快足FWファウスティーノ・アスプリージャ、精巧なスルーパスを繰り出すライオンのような髪型のカルロス・バルデラマら個性豊かな名手が揃い、1994年W杯の南米予選でアルゼンチン代表に敵地で5-0と圧勝してW杯出場権を獲得。世界中のファンの度肝を抜いた。「コロンビア代表史上最強」と評され、優勝候補の一角と目されてコロンビア国民の大きな期待を担っていた。
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しかし、W杯グループステージ(GS)初戦でルーマニアに1-3と完敗。続く地元アメリカ戦の前半35分、アメリカ選手の左からのクロスをエスコバルがクリアしようとスライディングしたところ、右足に当たってゴール方向へ。GKの逆を突き、オウンゴールとなってしまった。さらに後半、追加点を許し、試合終了直前のゴールも空しく1-2で敗戦。優勝どころが、わずか2試合でGS敗退が決まった。
国民は激怒した。とりわけ、アメリカ戦で失態を演じたエスコバルが槍玉に挙げられた。コロンビアはGS最終戦でスイスを倒したが、選手たちは悄然と帰国した。
エスコバルは生まれも育ちもコロンビア北西部のメデジンで、この町に本拠を置く強豪アトレティコ・ナシオナルのスター選手だった。当時、メデジンは犯罪、貧困、麻薬取引で悪名高かった。オウンゴールから9日後の7月2日、エスコバルが友人と共に市内のディスコに繰り出した後、自宅へ戻るため駐車場に置いていた車に乗ったところ、ピストルを持った男に6発の弾丸を撃ち込まれて死亡した。
犯人は麻薬密売業者の用心棒……その動機は?
この事件は、世界中のファンを驚愕させた。元々、コロンビアは麻薬売買と治安の悪さで有名だったが、この事件でさらにイメージが悪化した。
その後、犯人が逮捕され、麻薬密売業者の用心棒と判明した。「W杯でオウンゴールをしたことに対する個人的な恨み」ではなく、「アメリカ戦でコロンビアの勝利に大金を賭けていたギャングからの“注文”を受けて殺害した」という説が有力だ。ともあれ、W杯でのオウンゴールがに引き金になったことに違いはない。
エスコバルと同様に銃撃を受け、辛うじて一命は取り留めたが事実上、選手生命を絶たれたパラグアイ人ストライカーがいる。