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藤井聡太“20歳の名人挑戦”に「充実感があります」…羽生善治&谷川浩司「初名人の道」を開いた“A級順位戦プレーオフ伝説”とは 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2023/03/10 11:04

藤井聡太“20歳の名人挑戦”に「充実感があります」…羽生善治&谷川浩司「初名人の道」を開いた“A級順位戦プレーオフ伝説”とは<Number Web> photograph by Kyodo News

史上2番目の年少記録で名人挑戦を決めた藤井聡太五冠

 1994年の名人戦で、羽生棋聖は初挑戦した。そして、米長邦雄名人(同50)を4勝2敗で破った。名人位を初めて獲得するとともに、五冠のタイトルを取得した。

藤井は広瀬の攻めを冷静に受け止めて…

 最後に――8日に行われたプレーオフについて振り返る。

 広瀬八段と藤井五冠の対戦成績は、今期のプレーオフを迎えた時点で藤井の10勝3敗。藤井はそのうち先手番で8勝し、広瀬も先手番で2勝している。プレーオフでどちらが先手番になるかは、両者にとってかなり大きい。

 藤井竜王に広瀬八段が挑戦した昨年の竜王戦七番勝負は、藤井が4勝2敗で初防衛を果たした。しかし、第1局で先手番の広瀬が勝ったように、一番勝負のプレーオフではどう決着するかは分からない。なお、両者の対局の戦型は13局のうち、角換わりが6局、相掛かりが5局だった。

 3月5日に行われた棋王戦(渡辺棋王ー藤井五冠)第3局で、藤井は激闘の終盤で相手玉の詰みを逃して敗れ、戦績は2勝1敗となり、棋王の獲得と「六冠」の取得は持ち越された。また、藤井の先手番での勝利は28連勝で止まっている(未放映のテレビ対局を除く)。

 それから3日後の3月8日、広瀬八段と藤井五冠のA級プレーオフが行われた。振り駒によって、藤井の先手番と決まった。前局の棋王戦で敗れたとはいえ、これはやはり大きい。

 藤井は武器とする角換わり腰掛け銀の戦型に持ち込み、▲4五桂と銀取りに跳ねて開戦した。深い研究に裏付けされた必勝パターンである。さらに▲7五歩と突いて桂頭を攻めると、広瀬は△5二角と自陣に打って防戦した。

 藤井の激しい攻め、広瀬の懸命な受けと、中盤は対照的な展開となり、藤井ペースで進んだ。その後、広瀬は機を見て反撃に転じ、藤井の玉を攻め立てた。広瀬が受け一方の5筋の自陣の角を△2五角と中段に出し、△5八角成と金取りに敵陣に侵入した局面は、形勢がかなりもつれたように思えた。

 しかし、藤井は広瀬の攻めを冷静に受け止めると、最後は相手玉を即詰みに仕留めて勝った。藤井五冠はプレーオフで広瀬八段に勝ち、20歳8カ月で名人戦の挑戦者になった。1960年に加藤一二三・八段が打ち立てた20歳3カ月に次ぐ年少記録である。

「対局を通して力をつけることができ、成長できた」

 藤井は終局後の記者会見で、「これまでの6期の順位戦を振り返ると、6時間という長い持ち時間の対局を通して力をつけることができ、成長できたと思います。今期のA級は全体的に厳しい戦いでした。その中で名人戦の挑戦という結果を出せたのは充実感があります。名人戦は大きな舞台なので、それにふさわしい将棋を指せるように頑張りたいです」と語った。

 渡辺名人に藤井五冠が挑戦する今年の名人戦七番勝負は、4月5日、6日に東京・目白「ホテル椿山荘東京」で行われる第1局を皮切りに、全国各地の対局場を転戦する。

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