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「メッシはマラドーナより作れるかもしれない」“天才的センスの核心”を風間八宏が解説「現在の指導と仕組みでは無理です。ただ…」 

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風間八宏

風間八宏Yahiro Kazama

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photograph byKiichi Matsumoto/JMPA

posted2023/02/22 10:01

「メッシはマラドーナより作れるかもしれない」“天才的センスの核心”を風間八宏が解説「現在の指導と仕組みでは無理です。ただ…」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

カタールW杯のリオネル・メッシ。彼の持つスーパーな能力を風間八宏はどう見ているのか

風間 その技術ではぶっちぎりで頂点ですね。メッシがドリブルしていると、相手はまだドリブルするのか、シュートするのか、パスを出すのかわからない。「相手を自分の中に入れない」というのもメッシを論じるときの重要なテーマです。

――自分の間合いを保ったままプレーできる。

風間 ドリブルは相手に仕掛けていくのではなく、よけていく。普通は相手につっかけて行って、フェイントをかけて反応させて逆へ行くのですが、メッシの場合は基本的によけていく。自分の進む途中に相手が出てきたらよける。

――障害物競走みたいな感じ。

風間 同じカットインでも、アリエン・ロッベンとは違いますよね。ロッベンなら、横に4人並べておけばシュートは打たれないでしょう。メッシだと、それでも打たれてしまうと思います。

「案外メッシは作れるかもしれない」理由

――ところで、メッシは唯一の存在ですよね。メッシから学んでもメッシにはなれないと思うのですが、あえてメッシの技術に注目しているのはなぜですか。

風間 マラドーナは作れないと思いますが、案外メッシは作れるかもしれないと思っているんです。

――作れますか?

風間 現在の指導方法と仕組みでは無理です。ただ、そこを変えればメッシそのものを指導で作るのは無理としても、見つけやすくはなる。今の状況では、まずそのメッシになれる才能があるかないかもわからないし、見つけても伸ばせない。

――現状の何が問題なのでしょうか。

風間 現状でサッカー選手って、「川の石」なんですよ。転がっていくうちに角がとれて丸くなっちゃう。むしろ今のトレーニングは丸い石を作るためにやっているのかもしれない。プロでやるための規格に合わせてしまっているようなところがあります。

どんなトレーニングをすれば才能を発見できるのか

――例えば、現状の何を変えればいいのでしょう。

風間 1つ考えているのは、VRなどのテクノロジーを使ったトレーニングです。人が突然出てきたのをドリブルでよける練習とか。もう1つは、環境面で今やっているスペシャル・トレーニング(通称スペトレ)。幅広い年代の選手たちを一緒にプレーさせる。一種のストリートサッカーですが、極端に体格の違う相手とプレーすることで子供たちがいろいろな反射を覚え、知恵をつけていくのが狙いです。小さい相手、大きい相手、速い、遅い、強い、いろいろな相手がいる中で、同年代だけの練習では身につかないことが身につきます。いずれにしても、指導者側が今までにない練習や環境を提示していかないと、たとえメッシのような才能を持った子がいたとしても発見できません。

――なるほど。規格外の選手を作ろうとするなら、練習や環境も規格外でないといけないわけですね。でも、メッシになれる才能を持った人はほんの一握りでしょう。それでも皆がメッシを目指すべきなのでしょうか。

【次ページ】 ほとんどの人はメッシになれるわけではないが

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