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日本ではナーゲルスマンのような指導者は生まれにくい? 中村憲剛が語る“指導者ライセンス制度の課題”とは「人材のリソース全体を…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2023/02/10 17:01
2016年、28歳でブンデス1部・ホッフェンハイムの監督に就任したユリアン・ナーゲルスマン。現在はバイエルン・ミュンヘンの監督を務めている
「判で押したような指導が求められる」は真実か?
日本サッカー協会のライセンス制度は、指導者のレベル向上を促してきた。一方で、マニュアル化された指導によって、選手が画一的になったとの指摘もあった。
現役当時の中村氏の周囲でも、ライセンス講習には正と負の反応があったという。「判で押したような指導をしないと、ライセンスは取れない」という情報も聞いたそうだ。しかし、実際にここ2年で講習会を受講したひとりとして、「いまはそういうことはないです」と明言する。
「サッカーに正解はないので、『このテーマではこれを伝えてほしい』という要点を押さえれば、あとは自分で考えてやってみてくださいという感じです。指導案を含めて、受講者側の自由度が増しています。言い方を変えると、プレーヤーズ・ファーストの立場で考えるようになっていて、それが選手の成長を促し、指導者の力量を上げることにもつながる。指導者の個性も育まれていきます」
中村氏はJFAのロールモデルコーチとしてアンダーカテゴリーの日本代表を指導しているほか、中央大学サッカー部テクニカルアドバイザー、それに川崎フロンターレFRO(フロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー)の立場で、指導の現場に携わっている。ただ、1シーズンを通して監督やコーチという立場でひとつのチームに携わり、試合、練習、試合、といったサイクルに身を置いているわけではない。そのため、「指導現場での実践の数は少ない」と自覚している。
「だからこそ、指導実践ではいち早く内容や意図を理解して、うまく落とし込めるような工夫をしないといけない。4月からS級が始まりますので、これまで学んだことをもう一度整理しておこうと思っています」
指導者ライセンスを取得するには、相応の時間とエネルギーが必要だ。そして、ライセンスに対する責任を自覚していけば、その学びは間違いなく価値を持つ。
「A級ならA級の、B級ならB級のレベルにふさわしい指導を受けられると、周りからは判断される。だからこそ、そのライセンスに恥じないように勉強を続けていかないといけない」