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日本ではナーゲルスマンのような指導者は生まれにくい? 中村憲剛が語る“指導者ライセンス制度の課題”とは「人材のリソース全体を…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2023/02/10 17:01
2016年、28歳でブンデス1部・ホッフェンハイムの監督に就任したユリアン・ナーゲルスマン。現在はバイエルン・ミュンヘンの監督を務めている
23年度のS級は4月、6月、9月、10月、11月、12月に講習が予定され、指導実践試験も含めた総日数は60日を越える。海外プロクラブで2週間以上、Jクラブで1週間以上の実地研修も必須だ。合わせて、ほぼ3カ月を費やすことになる。
S級の資格認定にあたっては、筆記試験、指導実践、口頭試験、研修レポートに合格することが求められる。当然ながら、それぞれの試験を審査するインストラクターも、かなりの時間を費やすことになる。様々なリソースを考慮すると、現状では年間20人が精いっぱいと言えそうだ。
「講習を通じた知見の共有、指導者全体の底上げが必要」
2023年のJ1リーグ18チームで、最年少の監督は41歳の岩政大樹(鹿島アントラーズ)と川井健太(サガン鳥栖)だ。30代はひとりもいない。
J2の22チームには、35歳の監督がいる。スペイン人のベニャート・ラバイン(徳島ヴォルティス)だ。日本人でもっとも若いのは、43歳の時崎悠(栃木SC)となっている。22チームのうち13チームは、50歳以上の監督に率いられている。
J3には30代の監督がふたりいる。38歳のシュタルフ悠紀リヒャルト(AC長野パルセイロ)と、33歳のフリアン・マリン・バサロ(奈良クラブ)だ。彼らに続くのが、42歳の志垣良(FC大阪)となっている。
Jクラブの多くは、実績重視で監督を選んでいる。J1とJ2は、とりわけその傾向が強い。それもまた、引退から間もない監督の誕生を阻害する要因にあげられる。
「Jリーグは降格制度があるので、各クラブのフロントからすればやはり経験の浅い若い指導者、どうなるかが読めない指導者を、積極的に登用する動きをとりにくいことは十分に理解できます。だからこそ、ライセンス講習会を通してみんなで知見を共有し、指導者全体の更なる底上げをしていくことが、Jリーグ、日本サッカー界の成長につながると思います」