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54歳の現役格闘家・大石真丈はなぜ戦い続けるのか? “格闘技界の仙人”に聞く波乱万丈の30年「途中でやめたら、ただのアホなんで…」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2023/02/04 17:01

54歳の現役格闘家・大石真丈はなぜ戦い続けるのか? “格闘技界の仙人”に聞く波乱万丈の30年「途中でやめたら、ただのアホなんで…」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2022年11月の試合前、合掌して集中力を高める大石真丈。54歳の元修斗王者は、なぜ今も現役選手として格闘技を続けているのだろうか

 さらに数年の歳月が過ぎた2018年7月。私がオフィシャルをしている団体の試合で、彼が現役であることを知った。海外で行われたこの大会で、49歳の大石は地元の選手を相手に圧巻の一本勝ちを収めた。尊敬の念とともに、様々な疑問が湧き上がってきた。

 どうして、この歳まで格闘技を続けているのか。なぜ、プロとして現役を続けられるのか。大石真丈とは、いったいどんな人間なのか?

「俺はこんなもんじゃない」上場企業を退職しプロの道へ

 地元・静岡の高校でレスリングを学んだ大石が本格的に格闘技に打ち込むようになったのは、小さな偶然がきっかけだった。

「高校卒業後にサラリーマンとして上京したら、会社の寮が木口道場(山本“KID”徳郁や五味隆典を輩出)のすぐそばにあったんですよ。知り合いもいないし、やることもないので、体を動かすのにちょうどいいやと思って入会しました」

 入会後は一般のレスリングクラスで汗を流し、修斗の練習を始めたのは1、2年ほど後のことだったという。

「もともと東京勤務は2年間の約束で、その後は地元の事業所に帰ることが決まっていたので、ちょっとした経験のつもりでアマチュア修斗の大会に出場したら、優勝できたんですよ。これでも自称、天才なので(笑)。当時はまだシューティングと呼ばれていた時代で、プロ選手も少なかった。そしたらジムの先輩の朝日昇さんに『どうする、プロでやってみる?』と聞かれ、一生の記念になるだろうし、1回くらいは試合をしてみようと。当時、副業は禁止ですから、もちろん会社には内緒でした(笑)。どうせバレることはないだろう、と気軽に考えていましたね」

 当初の予定よりも東京での勤務が長くなった大石は、1993年11月のデビュー戦で判定勝ち。その後は静岡(沼津市)へ戻り、会社勤めを続けた。そんな中、オファーを受けて1994年9月のプロ2戦目に臨む。「勝っても負けても、これが最後」のつもりだったという。

「当時は全国各地に格闘技のジムがあるわけじゃない。特に地方は、練習環境がまったく整っていなかった。もちろん地元にもジムはありませんでした。だから勝っても負けても最後になるはずだったんですけどね。いざ試合になったら、ゴングが鳴ってグローブタッチをした瞬間にパンチをもらってしまった。その後は意識がないまま試合を続けていました」

 腕十字で敗れた大石は、まさかの決断をする。一部上場企業の会社を退職して、格闘家としての道を歩むことを選んだのだ。

【次ページ】 本格的に柔術を学び、念願の修斗王者に

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