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54歳の現役格闘家・大石真丈はなぜ戦い続けるのか? “格闘技界の仙人”に聞く波乱万丈の30年「途中でやめたら、ただのアホなんで…」
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![長尾迪](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/1/-/img_81f7dc07f2eca17fd25985d38aa43b67379625.jpg)
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/02/04 17:01
![54歳の現役格闘家・大石真丈はなぜ戦い続けるのか? “格闘技界の仙人”に聞く波乱万丈の30年「途中でやめたら、ただのアホなんで…」<Number Web> photograph by Susumu Nagao](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/e/2/700/img_e2aea55ae00c175868c7c136192e6465366086.jpg)
2022年11月の試合前、合掌して集中力を高める大石真丈。54歳の元修斗王者は、なぜ今も現役選手として格闘技を続けているのだろうか
「不完全燃焼でした。俺はこんなもんじゃない、もう少しできるはずだ、って……。まだ若かったですし、いくらかは貯金もあった。切り詰めたら、生活もなんとかなるだろうと。とにかく、最後までやり切ろうと思ったんです。会社をやめて、このまま格闘技まで途中でやめたら、ただのアホなんで……」
本格的に柔術を学び、念願の修斗王者に
再び上京した大石は弁当屋のほか、前職を生かした技術系などのアルバイトをしながら、プロ格闘家として強さを追い求める生活を続けた。所属するジムも木口道場からK‘z FACTORYに変更した。
ジムでは連日「ガチガチのスパーリング」が行われ、ここで生き残ったものだけが、試合をする権利を得ることができた。五味隆典をはじめ佐藤ルミナ、朴光哲、菊地昭など、後に修斗のベルトを巻く選手たちがしのぎを削っていた。
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退職後の大石は順調に勝ち星を重ねていったが、1999年に入ると急に勝てなくなった。引き分けを挟んでの3連敗。負けはすべてKOか一本だった。
「全然うだつが上がらなくて、ダメでしたね。2000年に戦ったバレット・ヨシダに関しては『ハワイに凄い選手がいる』と噂には聞いていて。そのバレットに負けて、本格的に寝技を勉強しようと思いました。ちょうど日本でブラジリアン柔術が広まってきた頃です。寝技を覚えたら、俺はやっぱり天才だなと思いました(笑)。実際、2001年からの戦績はかなりいいんですよ。この年に修斗の体重の規定が変わり、63キロだったのが、60キロ(当時はフェザー級、現バンタム級)で試合をするようになったんです。ナチュラルウェイトが65キロくらいなので、それも大きかった」
2001年11月、33歳の誕生日を目の前に、柔術という新しいスキルを身に付けた大石はついに修斗のタイトルに挑戦することになった。対戦相手のマモルは前年に新設されたフェザー級世界王者で、この試合が初防衛戦。大石が惨敗したバレットにもKO勝ちしている当時無敗の若手チャンピオンだ。関係者の間では、大石が圧倒的に不利だと思われていた。
しかし周囲の下馬評をよそに、大石は戦前から「自信満々だった」という。
「周りはどう思っていたか知らないですけど、もし賭けられるのなら、自分の勝ちに有り金を全張りしてもいいくらい自信がありました。根拠のない自信ですけどね(笑)」
大石がベルトを巻くことに要した時間はわずか104秒だった。フィニッシュの腕ひしぎ三角固めは狙っていたのだろうか。
「下から相手の腕が取れたらいけるだろうな、と。どんな体勢からでも、極められる自信はありました。もともと楽天家なんですよ。これまで味わった9回の引き分けのうち、8回は俺の勝ちだと思ってますから(笑)」