スポーツ名言セレクションBACK NUMBER
「羽生先生と藤井(聡太)五冠の共通点かな、と」羽生善治の天才性を渡辺明名人らトップ棋士はどう評したか「だって羽生さんは…」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by日本将棋連盟/Tadashi Shirasawa
posted2023/01/28 17:00
数々の名勝負を繰り広げてきた羽生善治九段。王将戦では、藤井聡太五冠に挑んでいる(王将戦は代表撮影)
「それだけ藤井将棋への評価が高いというか…」
<名言4>
指している本人が「未知を切り拓くのを面白い」と感じているという点では、通じている部分なのかなとも感じています。
(中村太地/NumberWeb 2022年1月22日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/851735
◇解説◇
第72期王将戦は藤井に対して羽生が挑戦者として臨む構図となり、将棋界の枠を超えた2大スターの初タイトル戦ということもあって大きな注目を集めている。第1局は藤井、第2局は羽生がそれぞれの棋力と魅力を存分に見せつけたが……前期の渡辺明-藤井聡の第1局も歴史的な激闘として、将棋ファンの記憶に強く刻まれている。
近年の将棋中継ではAIによる「評価値」がパーセンテージで表示される。中盤以降になると徐々に藤井の優勢が増していく「藤井曲線」という通称もファンの中で話題になった一方で、本局では最終盤を迎えても「50%-50%」の均衡を保ち続けた。さらに中村太地七段のNumberWebでの解説によると両者ともに「悪手の海」の中、わずかな時間で最善手を選び続けたという。
「とてつもなくハイレベルで衝撃を受けました」
「現代の最高峰の対局」
その言葉には、実感がこもっていた。
羽生相手に王座獲得を成し遂げた経験を持つ中村だが――本局の41手目「8六歩」など斬新な構想を見せるなど、進化を止めない藤井将棋の根底について、このように語っていた。
〈単純に考えて、大舞台になればなるほど「勝ちたい」という気持ちが強くなるのは、人間として自然の摂理ではないかと思います。しかしその中で藤井竜王は柔軟さを見せて指し回しました。そこには将棋への好奇心が見えました〉
中村は幼少期のあこがれだった羽生が座右の銘としている「運命は勇者に微笑む」の言葉と、藤井の指し手に共通項を見出していた。
その中村は王将戦を中継する「囲碁・将棋チャンネル」で第3局の1日目解説を務めており、対局開始直後に今シリーズの羽生について「この王将戦は自ら作戦を決めていくスタイルにしている印象を受けます。それだけ藤井王将の将棋への評価が高いというか、自分から動いていかないと、ということかもしれません」とも評していた。
自身初のA級昇級を目指して今期順位戦で戦う中村は、現在首位ながら今期B級1組最終局の相手に羽生が控えている。世代を超えた羽生-藤井の対局は、各世代のトップ棋士にも確実に刺激を与えているのだろう。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。