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「羽生先生と藤井(聡太)五冠の共通点かな、と」羽生善治の天才性を渡辺明名人らトップ棋士はどう評したか「だって羽生さんは…」 

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photograph by日本将棋連盟/Tadashi Shirasawa

posted2023/01/28 17:00

「羽生先生と藤井(聡太)五冠の共通点かな、と」羽生善治の天才性を渡辺明名人らトップ棋士はどう評したか「だって羽生さんは…」<Number Web> photograph by 日本将棋連盟/Tadashi Shirasawa

数々の名勝負を繰り広げてきた羽生善治九段。王将戦では、藤井聡太五冠に挑んでいる(王将戦は代表撮影)

 小学1年生の頃、通っていた公文式(かつて羽生がCM出演していた時代もある)の教室の休憩中、「100冊以上あった中で」たまたま手に取った本が羽生が記した書籍だったのだという。そこから父親相手の対局を皮切りに、道場、棋士養成機関である奨励会……というルートを幼少期の斎藤も走っていった。しかし将棋を始めるきっかけとなった羽生と17年後、タイトルを懸けて自身が戦うとは斎藤少年は考えてもみなかっただろう。ただ2021年初頭には……

「子供の頃に見ていたトップ棋士と対局できるのがいいですよね。53歳年上の加藤一二三先生とも対戦したことがありますし、奨励会に入る前には大会で80代のおじいさんに負けたこともあります。ただ悔しかったけど、いま思うとすごいことでした」

 このように語っていた。世代を超えて相まみえられる競技性について「将棋という競技の良さですね」とも。斎藤と羽生は23歳差である。そこにはやはり、羽生がトップランナーとして走り続けてきたから、という側面もあるのだ。

初の永世竜王をめぐる一局で渡辺は羽生に…

<名言3>
ここでひっくり返すのが羽生善治だろうという考えが浮かんでくる。だって羽生さんはそれまで、散々そういうことをやってきた人ですから。
(渡辺明/Number1044号 2022年1月20日発売)

 ◇解説◇
 2008年に開催された第21期竜王戦は、今でも語り継がれる伝説の“フルマッチ”シリーズとなった。

 渡辺は前期まで竜王位を4期連続で保持し、この年に防衛すると史上初の「永世竜王」の資格を手に入れるチャンスを手にした。しかしそこに挑戦者として登場したのが、羽生善治である。羽生もその時点で通算6期にわたって竜王位を手にしており、こちらも勝てば永世竜王、さらには「永世七冠」の称号を懸けた対局となった。

 将棋界におけるビッグマッチは、当初あっけなく決着がつくと見られた。第1局から第3局まで羽生が3連勝を飾り、さらに当時の渡辺は、羽生に番勝負で勝利した経験がなかったからだ。しかし渡辺は第4局の逆転勝利を契機に白星を積み重ね、3勝3敗。決戦は将棋駒の産地で知られる山形県天童市へともつれ込んだ。

 迎えた本局は一進一退の攻防が続き、2日目午後には記録係が秒読みを始めるほど。両者とも持ち時間を使い合って「1分将棋」となった終盤戦、羽生の指した107手目でわずかに形勢が「渡辺有利」に動いたのだという。

 ただ現在のAI評価値についても言えることだが――あれだけの極限状態の中で、対局者自身がその状況に気づくのは相当に難しいとされる。ましてや盤を挟んで座るのは、数々の「羽生マジック」を起こしてきたその人である。渡辺から不安や恐怖感が消えないのは無理もない。

 最終的に羽生が投了し、竜王を防衛した渡辺。彼の中でようやく投了図が見えたのは、128手目だった。

【次ページ】 「それだけ藤井将棋への評価が高いというか…」

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