草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
先発挑戦の中日・根尾昂が描く設計図 「投手」として初のキャンプを前に進めるハイピッチ調整の理由 立浪監督が命じた二軍スタートの真意は
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/01/29 11:01
「先発投手」として新たな挑戦の1年となる
投球の9割以上をストレートとスライダーで占めるスタイルは、リリーフだからこそ。先発では少なくとも100球、5イニング以上は投げなければならない。必然的に球種を増やしたり、ペース配分、駆け引きを覚える必要がある。投手としての経験値が絶対的に不足しており、まずは二軍で先発投手としての足場を固めるのだ。
動作解析に投げ込み…超精力的な自主トレ
投手・根尾の第2章は、沖縄から始まるわけではない。もう始動済みである。昨年12月には米国シアトルに飛び、メジャーリーガー御用達のトレーニング施設「ドライブライン」で投球動作を徹底解析。年明けには山本昌や岩瀬仁紀といった中日のレジェンドが通い詰めた、鳥取市のトレーニング研究施設「ワールドウィング」にも足を運んだ。その後は名古屋市内の球団施設を中心に自主トレを継続しており、屋内とはいえブルペンでの100球以上の投球練習を何度もこなしている。通常の投手よりはるかに早いペースであり、投球数だ。
「球数が増えていっても、しっかりと腕を振れるようになっていると思います。キャンプでもたくさん投げることだけが目標ではないですが、かなりの数はいけるんじゃないかなと思っています」
昨今の春季キャンプでは「投げ込む」という練習や選手がすっかり減ってきてはいるが、投球の基本は再現性にある。同じフォームで質の変わらない球をいかに投げ続けられるか。先発ならなおさらである。肩や肘の故障リスクに配慮することは当然としても、ある程度は「投げること」が再現性を高めるトレーニングとなる。それをこなせるフィジカルの強さこそが、根尾のストロングポイントでもある。
球種ももちろん増えそうだ。150kmのストレートにスピン量が球界トップクラスのスライダーを軸に、カーブ、ツーシーム、スプリットを練習中。特にツーシームは食い込むシュートと沈むシンカーの中間のように変化する。昨シーズンの大谷翔平を例にとるまでもなく、先発投手にとっては打者を1球で打ち取るための必須アイテムである。